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うみねこ通信 No.17 平成12年11月号

レントゲン検査あれこれ

主任放射線技師  小沢 茂行

「深く息を吸ってハイッ、止めて下さい!」の一言で、私たちの職種が理解されるほど、よく知られた検査に胸部X線単純撮影があります。深く息を吸ってもらうのは、ふだんあまり使われていない肺野の隅々までに空気を送り込み、隠れている病変をできるだけみつけようとするものです。

戦前戦後を通じ、亡国病とまでいわれた「結核」の検診に、この胸部写真が最も威力を発揮しました。私たちの大先輩達が、それこそ命を懸けて検診に打ち込んだ結果、この亡国病の「鎮静化」に成功しましたが、あれから半世紀を経た平成時代の今日、国の結核対策事業が益々縮小されるなかで、ここ数年、結核患者がジリジリと増えているのが気になります。胸部写真はまた、交通事故や肺がん検診の場合にも良く撮られますが、一枚の単純写真に含まれる情報量が他のそれに比べ、とび抜けて多いことから、私たちの間でも「X線検査は胸部に始まり、胸部に終わる」とまでいわれ、技術的尺度として今日に語り継がれています。

☆脱衣の理由は?

「レントゲン線(X線)は物体を透過するので衣服を着けていても検査はできるはず」と思われる方は多いでしょう。確かに着衣でも目的の部位は映りますが、例えば胸部写真の場合、検査に用いられるX線には、散乱線も含めて低電圧X線から高電圧X線までが混在しており、比較的検査の障害とならない綿の衣類でもシワが重なったりすると、この低電圧部分のX線によって、その影がフィルムに映ってしまいます。こうした着衣によるシワの重なりは、あたかも毛髪線のように映り、肺野に多い病巣の影と誤解され易いので、診断に一切不要な情報を除くためにも原則として脱衣が必要なのです。

☆バリウムの今昔

単純写真では映すことのできなかった胃や腸をX線写真として映すことが可能になったのは、バリウムのおかげです。いわゆるX線造影法です。胃腸の場合は空気とバリウムを併用した二重造影法が行われます。検査法として今日では定着していますが、この胃検査用バリウム、初期の頃はひどい味で、泥んこを飲んでいるような気分になり、検査を敬遠される方も結構おられたようです。しかし、今日ではサラサラとして飲み易く、香りも上品なことから、検査の苦痛もずいぶんと軽減されました。

一方、大腸の検査は注腸造影法といわれ、お尻からバリウムと空気が注入され、お腹が沢山の空気で満たされるため、検査が初めての方には少々戸惑いがあるかもしれません。

昨今、胃腸の検査はX線造影検査から内視鏡検査(胃カメラ、大腸ファイバースコープ)に移行する気配もありますが、どちらも一長一短があり、現在のところ併用検査が安心できるようです。

☆乳腺のX線検査はいま

食生活の欧米化に伴う大腸がんの増加が指摘されていますが、乳がんもまた増加傾向にあるようです。乳がんの検査は昔は視診、触診が主流でしたが、ここ数年の間に乳腺検査専用のX線装置が進歩普及した結果、視診や触診では判別が難しかった乳がんの病変が、X線フィルム上に画像として映し出されるようになったことから、X線乳腺撮影は今日では欠かすことのできない検査法となりました。

しかし、この乳腺撮影にもやっかいな問題があります。主なものは乳房への強い圧迫です。検診に用いられるX線は低電圧のため、厚い被写体(乳房)だとX線が吸収し過ぎて内部(乳腺)が良く見えません。逆に高電圧だと病巣部分が透過され、フィルムに映らなくなります。そんな理由から、乳腺撮影には乳房圧迫はどうしても必要となります。

受診される方々のためにも、私たちは特別の配慮を心がけながら撮影を行っていますのでご理解下さい。

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