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うみねこ通信 No.18 平成12年12月号

腰痛あれこれ

整形外科副部長  武田 裕介

2足歩行するヒトに生まれた宿命か、私たちのほとんどが、すくなくとも一生に一度は腰痛を経験するといわれています。腰痛は、職業、生活習慣、性別、年齢などの要素が互いに関係して発生し、その原因の大部分は腰の骨やその周辺の筋肉の異常によるものです。腰痛には、急に腰に痛みの起こる急性腰痛と、はじめのうち軽かった痛みがしばらくするうちに悪化してきたり、何回も繰り返して起こる慢性腰痛があります。

急性腰痛の代表的なものは、いわゆるギックリ腰(腰椎捻挫)です。何かしようと体を動かしたとたん、腰にギクッと痛みが走り、激痛のため身動きがとれなくなるものです。背骨を支えている筋肉や靱帯、椎間板、椎間関節が傷つくことが原因といわれていますが、詳細は不明です。ギックリ腰の多くは、1~2週間で痛みがおさまります。腰の痛みが強い初めの2~3日には、楽な姿勢で安静に寝ていることが大切で、鎮痛剤を使用する場合もあります。

 腰痛に加えて、腰から足先にかけてしびれや痛み(坐骨、大腿神経痛)や脱力がでてきたときには、腰椎椎間板ヘルニアを考えなくてはなりません。椎間板と呼ばれる、背骨のクッションの働きをする軟骨が傷ついて、後方にある神経を圧迫して症状が出るのです。椎間板はX線写真には写りませんが、MRI(核磁気共鳴画像)では、その形態が写し出され、神経の圧迫状況を捉えることができます。さらに、造影検査を加えると、ヘルニアの質的診断が可能で、自然吸収が期待できるか、できないかを予測でき、治療方法の選択に非常に役立ちます。

高齢者の尻もちをついたあとの急性腰痛は、脊椎圧迫骨折(背骨がつぶれること)によるものが多く、骨粗鬆症(骨からカルシウムが抜けて骨の量が減り骨が軽石のようにスカスカになった状態)が基礎にあるため、痛みの治療に加えて、骨粗鬆症に対する治療も必要になります。

急性腰痛のなかで安静に寝ていても痛みがおさまらないものには、腫瘍、炎症、内臓関連の重大な疾患が含まれることもあり注意が必要です。

慢性腰痛の代表的なものは、筋肉の疲労による慢性腰痛症です。中腰、坐位、立位で長時間同じ姿勢を続けることにより生じるもので、正しい姿勢や30分に一度程度軽いストレッチを行うこと、腹筋や背筋の筋力強化を行うことが大切です。肥満も背骨と周囲の筋肉への負担を増加させる、危険因子のひとつです。

中年期以後にみられ、朝起床時や夕方の疲労時に痛むタイプの慢性腰痛は、椎間板や椎間関節の老化で、背骨が変形して動きが悪くなった変形性脊椎症によるものです。寝ている間に体温が下がり、長時間同一姿勢を続けることにより、関節が硬くなって、動かし始めに痛みが出るのです。寒い朝、布団から、エイヤッと飛び起きたりせず、布団の中で、寝返りしたり、横向きで腰を屈伸したり、体温が少し上がるまでの間、ゆっくり準備運動することが、腰痛の再発防止につながります。腰痛体操も効果があれます。また、変形性脊椎症のある方で、長い距離を歩く途中、ふくらはぎが引きつって痛んだり、しびれたりして一気に歩けず、何かにつかまって腰を曲げてしばらく休むと症状がとれ、また歩くことができるといった場合には、脊柱管狭窄症が疑われます。変形した関節により神経が窮屈な状態になり、疲れやすくなるのです。自動車での移動が多いなど、日常生活で歩く機会の少ない方では、症状の進行に気付かずに過ごされている方も少なくありません。

その他、腰痛の原因には、思春期のスポーツにより腰椎が疲労骨折を起こしたために起こる腰椎分離症腰椎分離すべり症などがあります。

このように腰痛の原因はいろいろありますが、完全に腰痛を防ぐ方法のない現在、腰痛が出たら適切な対処をして、なるべく早い社会復帰を目指したいものです。

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