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うみねこ通信 No.11 平成12年5月号

「乳癌の予防法」はあるか?

副院長(外科)  相内 晋

近年、癌が増えておりますが、その内でも、乳癌は肺癌、大腸癌と共に明らかに増加しています。乳癌の発生には民族による差違がみられ、わが国の乳癌発生率は欧米諸国に比べると非常に低く、約1/5~1/10と思われます。しかし、生活様式や食生活の欧米化により、ホルモン環境の変化を来たし乳癌の発生率は著しく上昇傾向を示しています。

発癌を増加させる因子としては、ホルモン、環境、生活、遺伝、栄養摂取などがあり、それぞれが複雑に関与していると思われます。女性ホルモンが乳癌発生と密接な関係があることは、不自然と思われるホルモン環境の女性すなわちハイ・リスク群(注)に、乳癌発生が高率にみられることでも理解されます。栄養摂取では、動物性食品、とくに蛋白質、脂肪の過剰摂取により肥満している女性に乳癌発生率が高いといわれています。また、乳癌は家系的発生傾向の強い疾患で、母親が乳癌の場合約3倍の危険率があると言われています。しかし、この内で肥満を予防すること以外には個人の努力で解決できるものは無く、乳癌発生の予防は困難であり、早期発見・早期治療が望まれます。

さて、乳癌の初期症状は、乳房のシコリ(94%),乳頭からの分泌(3%)、その他(乳房痛、乳頭のただれ,ひきつれなど)(3%)です。突然異変として発生した1個の乳癌細胞から、直径1センチのシコリを形成するまでは約10年を要すると言われていますが、この間はシコリはほとんど触知できません。偶然に気付いたシコリはすでに直径2センチを越えていることが多いようです。乳癌は直径2センチ以下で手術を受けた場合は、10年生存率は約90%で比較的予後の良い癌といえます。直径2センチ以下で乳癌を発見するためには、毎月1回の適正な自己検診と、さらに,非触知の乳癌を発見するために定期的に乳癌検診を受けることが、最も現実的で有効な「乳癌の予防法」だと思います。

(注)ハイ・リスク群:結婚、妊娠、生理などに関する因子で、わが国では近年独身女性が増加しており、結婚年齢の高齢化に伴って初産年齢も高齢化しています。結婚女性の1人当たりの出産数、子供の数も減少傾向にあります。初潮年齢も若年化し、閉経年齢も高齢化しつつあります。この様なホルモン環境の女性は、乳癌に罹りやすいといわれています。

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