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うみねこ通信 No.13 平成12年7月号

食べたり、飲んだり、しゃべったり!?

歯科口腔外科副部長  中山 勝憲

一般の人に口の病気と言えば、すぐに思い浮かぶのは虫歯と歯槽膿漏でしょうか? 虫歯や、歯槽膿漏によってぐらついた歯はとても痛いもので、「今日はたべれないよ~」という経験はどなたでも一度はあると思います。ここでちょっと考えてみてください。普段、何気なく行っている「しゃべったり」「食べたり」「飲んだり」という動作が、明日突然出来なくなったとしたら、あなたはどうなさいますか? 現実にそのような病気の患者さんが徐々に増加しつつあります。今回は虫歯や歯槽膿漏以外の重要な病気に関して簡単に触れたいと思います。

【顎関節症】

この病気は、口が開かない・痛い・関節雑音などの諸症状を持って発症します。ひどい人は頭痛・頚部痛・肩こり・体重減少などを合併することもあり、テレビなどでも盛んに取り上げられています。顎関節症には多数の症型が存在しますが、その中で最も多いタイプは、関節内部の関節円板という組織がずれて関節の動きを妨げているというものです。こうなると、関節の動きに制約が生じ、口が開かなくなります。あくびなど無理に大きな口を開けると円板が折れ曲がり非常に強い痛みが生じるようになり、またこれを放置すると2~3ヶ月後には、関節内部に癒着が生じこれを手術的に切離しないかぎり口が開かなくなる人もいます。食事や会話を障害するとても辛い病気です。

【口腔ガン】

口は舌・下あご・上あご・ほほ・口腔底(口の底の部分)・唾液腺・歯ぐき・歯・のどの一部からなり、その中で歯を除いた全ての部位にガンは発症します。消化器ガンや肺ガンに比べればその発症頻度は少ないものの徐々に増加傾向にあります。口腔ガンの中では舌ガン歯肉(歯ぐき)ガンが多く、舌の場合は側縁部に、歯ぐきの場合下あごの奥の方(扁桃腺の前)が好発部位となっています。ガンは潰瘍状のものや、単なる腫れ、あるいは白っぽく見えるだけなど、その外観は多種多様です。舌ガンの場合は口内炎と極めて類似し、歯肉ガンの場合歯槽膿漏と区別がつけにくいのです。口を開けると見える部位に発症しているにも関わらず、比較的進行してから見つかることが多いのはこれらの事項が原因しています。さらにこれが治癒率を低下させている一つの要因と言われています。また、「口の中にガンなんて?」という過信が、病院へ行くことを遅らせているというのも事実です。現に、歯並びや歯ぐきの健康に気を使うようになった昨今、大都市圏では口腔ガンの早期発見率が高く治癒率も向上してきています(逆に地方では、進行ガンが多いという結果も出ています)。早期発見が大切ですが、手術方法(特に移植再建手術)の発達や化学療法、放射線治療の改良により治せる病気となった今、延命率は向上し社会復帰している患者さんも多数存在します。

他に、口唇口蓋裂(みつくち)や唾石症(唾液腺に石のできる病気)、嚢胞(膿の袋)、交通事故による顔面骨折等、「しゃべったり」「食べたり」「飲んだり」を妨げる病気はたくさんあり、虫歯や歯槽膿漏だけではないことを知っておいて頂ければ幸いです。以上、ここにあげた病気は生活習慣病とは異なり、普段の生活改善で防止出来るものではありません。従って、何度も言いますが早期発見・早期治療が最も大切になります。毎日の歯磨きの際、お口の中をちょっと覗いてみませんか? ほんの1秒でいいのです。それが健康なお口の第一歩となるはずです。そしていつまでも楽しく食べたり、飲んだり、しゃべったりしたいものです。

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