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心臓血管外科部長 高橋 賢二
慢性動脈閉塞症
慢性動脈閉塞症とは徐々に動脈の内径が狭くなり、さらに閉塞してしまうため四肢が虚血(血液が十分に通わない状態)となり、種種の症状をきたす疾患です。本疾患は大きく分けて(1)閉塞性動脈硬化症、(2)閉塞性血栓血管炎(バージャー病)の2種類が代表的なものです。
(1)閉塞性動脈硬化症
本症の原因は動脈硬化です。体質、食事、糖尿病、高血圧症、喫煙、性別(男:女=9:1)、年齢(50歳以上)などが大きく関与します。本症の症状の分類にはフォンテインの分類を用いるのが一般的です。上肢では症状が少なく、一般的には下肢が治療が対象です。
患者さんができる診断
医師が行う確実な診断法は血管造影法です。そのほか最近種々な診断法があります。
治療
薬物療法はⅠ度とⅡ度の軽症令が適応となります。Ⅱ度の重症例からⅣ度までは絶対的手術の適応です(狭い範囲が短い場合はカテーテルを使用した治療も可能)。しかし、術前に血管造影検査を行い確実な情報を得ておくことが必要です。そのため、早期の専門医への受診が必要で、受診が遅れ下肢の切断を余儀なくされることも稀ではありません。本症は高血圧症、狭心症、心筋梗塞、糖尿病、高脂血症など他の病気と合併していることがあり注意が必要です。
(2)閉塞性血栓血管炎(バージャー病)
上肢や下肢の中・小動脈および静脈が侵され血栓にて閉塞する疾患です。原因は不明ですが、若いヘビースモーカーの日本人男性に多いとされ、有効な治療がないことから日本では難病に指定されています。最近では興味本位でたばこを吸う中学生や、高校生の症例もみられるようになってきました。前述したように有効な治療手段が少なく、虚血で壊死を生じると手や足の指の切断から始まり、足関節、下腿、大腿と切断が必要になり、一生を棒に振ってしまうこととなり、若いうちからの喫煙は避けたいところです。
1970年代には閉塞性血栓血管炎と閉塞性動脈硬化症の割合は6:4でしたが1975年を境に逆転して、最近では90%以上が動脈硬化が原因の閉塞性動脈硬化症がしめるようになりました。その背景には食習慣の変化や平均寿命が伸び、糖尿病、高血圧症、高脂血症などの動脈硬化を促進する病態が増加したためと思われます。もし、これらの疾患が疑われましたら、早期に専門医による診察を受けて下さい。