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うみねこ通信 No.24 平成13年6月号

痛い脳卒中・痛くない脳卒中

脳神経科部長  鈴木 直也

誰でも多少の頭痛の経験はあると思いますが、痛みが長引いたり、身近に脳卒中の人がいると心配になるものです。痛みは病気のありかを教えてくれる手がかりの一つですが、痛くても脳卒中ではないことはよくありますし、逆に痛くなくとも脳卒中であることもよくあります。

頭の中の痛み

脳と脊髄は、脳脊髄液という無色透明の液体のなかに浮かんで存在しています。脳は柔らかく傷つきやすい臓器ですが、実は脳自体が傷を受けても痛みを感じません。では脳卒中など、頭の中で事件が起きたときにはどこが痛むのでしょうか?

その答えは、(1)脳表面を栄養する血管のうちで比較的太い血管の壁と、(2)脳と脳脊髄液を包んでいる数枚の髄膜、と考えられています。しかも、脳の表面から直接脳の中心へ痛みが伝わるのではなく、三叉神経という顔面の痛覚神経や、咽頭部の痛覚神経の通り道まで遠回りをして脳に入ります。

頭が痛くなる病気

脳卒中の中で最も痛いといわれるのはクモ膜下出血です。この病気は、動脈性出血が脳表面に沿って広がって脳表面の血管を刺激することに加えて、脳と脳脊髄液の圧力も急激に高くなるので、突発的かつ最大級の頭痛を呈します。原因の大半は脳動脈瘤という破れやすくなった血管の膨らみが知らぬ間にできていて、あるとき突然破けて脳の表面に沿って出血がひろがる、という病気です。高血圧性脳内出血という脳卒中も、出血が大きければ脳や脳脊髄液の圧力が高まるための頭痛が生じます。

一方、ウイルスや細菌が脳脊髄液に進入して炎症が起きる髄膜炎でも、脳脊髄液圧が高まったり炎症が髄膜を刺激するための頭痛が起こりますし、頭の血管の壁が敏感になって痛みを生じる片頭痛という病気も比較的よくあります。これらは脳卒中ではありませんが、主として神経内科で治療される頭痛です。普段の血圧が高くない人が突然血圧が高くなったとき、また血管を拡張させる血圧の薬の副作用でも脳の血管が引き伸ばされて頭痛が生じます。

頭が痛くならない脳卒中

脳の血管が詰まる脳卒中(=つまり脳梗塞)の大半は発症時には痛みがありません。出血と違って、脳の圧力があまり上がらないためと説明されます。似たように血管が詰まる病気でも心臓の冠動脈閉塞による心筋梗塞が強い胸痛を起こすのと対照的です。

痛いけど脳卒中ではないもの

しかし頭痛だからといって、頭の内部が痛いとは限りません。むしろ痛んでいるのは頭の表層(=頭蓋の外の筋肉や皮膚)であることは意外に多く、以下のような仕組みによります。頭の表面の痛みは、痛覚神経が直接付近の頭蓋骨を貫いて脳に入るのではなく、いったん首の後方に進んで、頚部の筋肉層や頚の骨の隙間を回り込んでから脊髄に入っていきます。ストレスや疲労で生じることも多い肩こりや首こりは、これらの神経の通り道を巻き込みますので、いかにも後頭部を中心に頭全体が痛い・重いと感じさせます。首の骨の変形や捻挫やむち打ち症状でも同様です。これらは、まるで頭の内部が痛んでいるかのような錯覚や混乱を本人に引き起こしますし、時として頚椎付近にある自律神経も巻き込んで、めまいや吐気を起こすこともあります。

前方の顔面や額までは、三叉神経という知覚の神経も痛みの感覚を受け持っています。この神経は顔の表面のほか、眼球周囲や鼻腔、副鼻腔、歯も守備範囲とする痛覚神経です。そのため緑内障などの眼科の病気、副鼻腔炎など耳鼻科の病気、強い虫歯の痛みが生じたときは、放散痛という現象によってまるで前頭部の頭痛として感じてしまいます。同じ理由で、風邪をひいたときの咽頭部(のど)の炎症も頭痛の原因となります。

頭痛の発生源にはいろいろなものがあります。そのうち本当に危険な症状は少数派なのですが、痛んでいる本人には意外に判別がつきがたいものです。不安を感じて悩むとなおさら頭痛の種になってしまいます。頭痛の診断は、当院の場合神経内科脳神経外科どちらでも引き受けています。

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