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うみねこ通信 No.41 平成14年11月号

胆石の腹腔鏡下手術

第二外科部長  成田 淳一

胆石といえば、お腹が痛くなる、体が黄色くなるといった症状でご存じの方も多いでしょう。身体の中にできる石の代表格で、肝臓でつくられる"胆汁"という黄色い液体に溶けている成分が固まったものです。

胆汁は胆管という管を通って十二指腸に排出されます。この胆管の中にも胆石(胆管結石)はできますが、最もできやすいのは胆嚢(たんのう)という袋状の臓器で、胆嚢管という管で胆管の途中とつながっています。胆嚢の中に石(胆嚢結石)ができても、炎症を起こしたりしなければ必ずしも治療の対象になりませんが、胆嚢炎や、胆管に石が脱落することで起こる黄疸(身体が黄色くなる)、胆管炎、膵炎などを一度でも起こしたときは治療した方がいいでしょう。残念ながら胆石を薬で溶かしてしまうことはできませんので、手術が必要になります。

胆嚢結石の手術では、石だけではなく胆嚢ごと切除します(石だけ取り除いたとしても再発します)。胆嚢は私たちが食事をした時に収縮し、中に入っている消化酵素をたくさん含んだ濃い胆汁を排出して消化吸収を助けますが、胆嚢を切除することでそれが障害されることはまずありません。

胆嚢を切除する時、以前はお腹を10cm以上切開して手術を行っていましたが、10年余り前から「腹腔鏡下胆嚢摘出術」が普及し出し、今ではそれが標準的な手術になっています。

腹腔鏡というのはお腹の中を覗くカメラ(内視鏡)のことです。といっても、胃カメラとは異なり、胃や腸の中ではなく、その外側(腹腔:腸管や肝臓など、内臓が納められている空間)を覗くものです。お腹に1cm前後の切開を4か所ほど置き、手術操作を行う器械と腹腔鏡をそこから入れて、モニターテレビを見ながら手術をします。

腹腔鏡下手術の利点は侵襲(身体に与える障害)が小さいことです。術後の痛みが少ない、入院期間を短縮でき、早期の社会復帰が可能、腸管の癒着による腸閉塞の合併が少ないなど、多くの利点があります。

しかし、いいことばかりでもありません。技術的には開腹による手術(お腹を大きく切開する方法)より難しいという欠点があります。例えば、見えるのはモニターテレビに映る映像だけなので遠近感がなく、空間の把握が難しい、手を入れることができないので急な出血などのトラブルに対処し難い、術野は拡大されて大きく見えるが周辺を広く視野に入れることが難しい→周辺でのトラブルに気付くのが遅れやすい…などといったことです。

この手術は世界中で非常に多く行われ、経験の蓄積によって起こりやすい合併症が明らかになり、どういうことに注意しなければならないかがわかってきました。そのおかげで今日では安全に行われる手術になりましたが、上腹部の手術を受けたことがあって癒着の高度な人、何らかの基礎疾患があって血液が固まりにくい人などでは、腹腔鏡下手術は避け、開腹手術を選択するようにしています。

とは言え、腹腔鏡下手術の割合が年々高くなっているのは事実です。手術の低侵襲化は時代の趨勢なのです。腹腔鏡下手術は、胆嚢結石だけではなく、胃や腸の手術への応用も試みられていますが、そのきっかけとなった腹腔鏡下胆嚢摘出術は、消化器外科領域における画期的な進歩のひとつと言えるでしょう。

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