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うみねこ通信 No.35 平成14年5月号

緑内障について

眼科部長  木村 百子

今まで一度も目の病気をしたことがない人でも、白内障と緑内障という病名ぐらいは聞いたことがあるでしょう。昔は、どちらも失明する病気として人々に恐れられていましたが、現在,白内障は手術によって良好な視力を得ることができるようになりました。一方緑内障は未だに有効な治療法はなく、いったん失われた視力、視野を回復することはできません。

緑内障とは、光を感じたり、色を識別したり、物の形を判断したり、いわゆる視覚に関係する情報を脳へ伝える働きをする神経が、少しずつ(場合によっては急激に)消耗して、視野が狭くなり、進行すると明かりも判らない状態(失明)となる病気です。

眼球の中は房水とよばれる血液をろ過した透明な液体で満たされており、新しく産生される房水と目の中から排出される古い房水のバランスがとれている場合は、眼球内の圧力(眼圧)が正常に保たれます。この房水の排出の働きが悪くなり、眼の中の水分が過剰となり眼圧が高くなって、視神経が圧迫されることにより緑内障は進行します。この房水の排出路の構造によって閉塞隅角緑内障と開放隅角緑内障にわけられます。

閉塞隅角緑内障では、房水排出路が物理的に塞がることによって急激に眼圧が上昇し、眼が痛み、視力低下し、頭痛、嘔吐などの発作をおこすことがあります。一方、開放隅角緑内障は自覚症状に乏しく、初期の段階で眼痛や視力低下などが起きる例は稀です。十年単位でゆっくり視野が狭くなり、おかしいと気がつき眼科を受診する頃にはかなり進行した状態で、残された視野は少なくなっています。この頃でも中心部の視機能は保たれており、視力は1.2, 1.5と良好な例も多く、視力検査では緑内障を発見することはできません。ちょうど望遠鏡をのぞいているように、見ているものは良く見えるのに周囲は全く見えない、歩けないという状態となります。緑内障の9割はこの慢性的に進行するタイプです。

最近では、眼圧をコントロールする緑内障点眼薬も多数開発され、レーザーを用いた治療、手術療法など緑内障の悪化をくい止める治療法は進歩しています。早期に発見できれば、一生、失明せずに良好な視機能を維持することが可能です。疫学調査では40歳以上の日本人の3.56%、およそ100人に3人強は緑内障といわれています。失った視機能を取り戻す有効な治療法のない現在、障害が進む前に的確な診断を受け、適切な治療を継続して視野の保全に努めることが重要です。早期発見のためには、たとえ自覚症状がなくても健康診断、人間ドックなどを受けられる際は、必ず眼科検診、眼底検査も受けてください。また、親兄弟など血縁者に緑内障のある方は、20代から眼科で検査を受けられることをおすすめします。

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