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第3内科部長 日向 豪史
コレステロールは、人間のからだの重要なホルモンの原料になったり、からだを構成するたくさんの細胞の膜の成分になったりする、大切な物質です。しかし、血液中のコレステロールが多すぎると、全身をめぐっているたくさんの血管が、硬くもろくなる、いわゆる動脈硬化になりやすくなります。特に、心臓の血管が動脈硬化にいたると、狭心症さらには、心筋梗塞(しんきんこうそく)といった、命にかかわる重篤な病気になりかねません。
健康診断などで採血すると、「総コレステロール値」という検査がなされます。コレステロールには、大きく分けて、悪玉コレステロールと善玉コレステロールがあります。悪玉コレステロールは、動脈硬化をひきおこし、善玉コレステロール(HDLコレステロール)は、動脈硬化を抑制します。総コレステロール値は閉経後の女性は高値になりやすく、男女とも年齢と共に高くなる傾向があります。12時間以上空腹にして採血した、総コレステロールの値の正常値は200mg/dl以下です。総コレステロール220mg/dl以上、HDLコレステロールが40mg/dl未満で、高脂血症(こうしけっしょう)の診断になります。
高脂血症は、一般には自覚症状の出ない病気です。しかし、高脂血症が引き起こす動脈硬化症が出現すると、病気の生じる場所によって症状が出てきます。動脈硬化がおこるメカニズムを見てみましょう。まず、血液中のコレステロールが高い状態が続くと、図のように、血管の内側に「脂質(ししつ)プラーク」というものができます。さらに血液中の貪食(どんしょく)細胞などがコレステロールをためこんで、そのプラークを大きくしてゆきます。そうして、血管の中が徐々にせまくなり、血液の流れがわるくなります。血管がつまってしまう事態にいたると、血液の流れが遮断されてしまい、からだの臓器は酸素不足になります。心臓の血管である、冠動脈の場合は心筋梗塞に、脳の血管の場合は、脳梗塞に、下肢の血管の場合は、閉塞性動脈硬化症になります。しかし、コレステロールを低下させる治療を行うと、このような動脈硬化症の発症を、かなりの程度予防できることがわかっています。
コレステロールは、からだのなかで作られる部分が8割、食事に由来する部分が2割と言われています。コレステロール値が高い場合には、まず食事療法が必要になります。食事の全体の量を制限することと、脂肪摂取の比率を総カロリーの20~25%にすること、コレステロールの一日摂取量を300mg以下にすることが望まれます。食事の量は、標準体重×30Cal(カロリー)で計算されます。標準体重は、(身長×身長)×22で計算します。脂肪については、なるべく動物性脂肪(肉類、卵黄など)を少なくするように努めましょう。食事習慣の改善だけで、コレステロール値が下がる方はたくさんいると思われます。(参考のために、コレステロールの多い食品を表に載せました。)
コレステロールを含む食品
食品名 | mg/100g |
食品名 | mg/100g |
食品名 | mg/100g |
食品名 | mg/100g |
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卵黄生 | 1,300 |
いかくんせい | 370 |
ほたるいか | 250 |
カステラ | 190 |
いかするめ | 980 |
さきいか | 370 |
豚肝臓 | 250 |
くるまえび養殖生 | 190 |
あんこうきも | 560 |
鶏肝臓 | 370 |
牛肝臓 | 240 |
かつお節 | 180 |
すじこ | 510 |
ししゃも輸入生干し | 340 |
うなぎ蒲焼き | 240 |
どじょう生 | 180 |
干しやつめ | 480 |
たらこ生 | 340 |
バター | 240 |
あなご生 | 160 |
うずら卵 | 470 |
牛腎臓 | 310 |
いか塩辛 | 230 |
養殖あゆ焼き | 150 |
鶏卵全卵生 | 470 |
いか生 | 300 |
さくらえびゆで | 230 |
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いか焼き | 410 |
生うに | 290 |
身欠きにしん | 230 |
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かずのこ生 | 370 |
しらす干し | 250 |
マヨネーズ卵黄型 | 200 |
科学技術庁資源調査会編「日本食品脂溶性成分表」より
食事療法を徹底していても、なかなかコレステロール値が正常にいたらない場合があります。この場合は、からだのなかで合成されるコレステロールを少なくする必要があります。このようにしてコレステロールを低下させる作用のある、お薬が数種類あります。コレステロール値の検査の結果をみて、医師がどの薬が適当か判断します。お薬を始められたら一般には、一生飲み続けることが多いですが、食事への配慮は忘れないようにしましょう。そしてコレステロールを適正に保ち、血管をいつまでも若いままにすることが大切です。