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うみねこ通信 No.54 平成15年12月号

薬の体内での働きと薬物血中濃度

薬剤師  笹森 亮

堅苦しいテ-マをとりあげましたが、興味のある方は、目を通していただければ幸いです。

薬を有効に、そして安全に使うためには、それぞれの薬に決められている用法・用量を正しく守っていただくことが重要です。薬を投与(服用あるいは注射された)後どのように体内に入り、効果を発揮して体外へ排泄されるかは、個々の薬によって、また剤形によっても異なります。多くの薬は服用方法で効果に大きな違いを生じることはありませんが、近年の新薬には患者さんごとに決められた用法・用量を正しく守っていただかなければ効果が出ないものや、副作用が強く出るものなどが多く出回っています。そこで今回、薬の体内での動きと血中濃度についてお話し致します。

【薬の体内動態について】

薬には様々な剤形がありますが、その投与後は主に血液中に移行します(吸収)。注射薬は静脈内、皮下・筋肉内への注射などによって全身へ取り込まれます。内服薬は主に小腸より吸収され肝臓を経て血液中へ、またその他舌下錠は口腔内から、吸入薬は肺、坐薬は直腸、テープ剤(血管拡張薬、気管支拡張薬など)は皮膚からそれぞれ血液中へ移行します。吸収された薬は血液によって各臓器へ運ばれ、効果を発揮した後に体外へと排泄されます。その主な経路は尿中と糞中です。水溶性の薬(水に溶けやすい薬)はそのままの形で主に尿中に排泄されます。一方、脂溶性の薬(水に溶けにくい薬)は主に肝臓で代謝(酵素の働きによって薬の構造が変化して水溶性となる)という過程を受けた後に尿中や糞中に排泄されることになります。従って、肝臓や腎臓の状態によっては薬の効果に影響が出る場合があります。その他、体内動態に影響を及ぼす因子としては、年齢、性別、病態の程度、個々の体質、妊娠、薬物間の相互作用、食事内容、嗜好品、生活習慣などが挙げられます。以上の因子についての事項が、お薬情報に記載されていることもありますので、注意して読んでいただきたく思います。

【薬の血中濃度、作用部位の濃度と薬効】

現在、作用部位(臓器)での薬の濃度を測定することは、ほとんどの場合不可能です。しかし多くの薬において血液中の濃度と作用部位の薬の濃度や薬の効果とは高い相関があります。また薬によっては、血中濃度の無効域・有効域・副作用域が狭く、近接しているものもあります(わずかな服用量の違いで効果が無かったり、副作用が出たりするような薬)。特にこのような薬では、効果が不十分な時、副作用が疑われる場合、濃度が良好に保たれているかを確認するなど、必要に応じて薬の血中濃度の測定が行われます。薬の血中濃度は、上述した体内動態により大きく変化します。服用量が同じでも、薬の効果に個人差が出てくるのはそのためです。ビール1本飲んでも平気な人(無効域)、気持ちが良くなる人(有効域)、酔って気分が悪くなる人(副作用域)と考え方は同じです。従って、患者さんひとりひとりに適切な服用量・服用方法を設定する上で、測定結果を治療に反映させることは非常に重要なポイントとなります。対象となる薬として、抗不整脈薬、気管支拡張薬、強心薬、抗てんかん薬、抗生物質、免疫抑制剤などが挙げられます。

【血中濃度測定に際しての注意】

測定は生化学検査などと同様に、採血により行われます。薬には血液中での日内変動が大きいものや、1日を通じて血液中の濃度が一定のものなどがあります。それぞれの薬によって体内動態に特徴があるため、目的に合った的確な採血時期・時間が指示されています。次回受診時に薬物血中濃度の測定がある場合には、各診療科で注意事項が連絡されることがありますが、これはその測定を行う上で重要なことですので、是非守っていただきたいと思います。

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