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うみねこ通信 No.45 平成15年3月号

手のしびれ?

神経内科部長  栗原 愛一郎

皆さんの中でしびれを経験したことがない人はまずいないと思います。長時間正座をした後足がしびれ力が入らず立てなくなったり、虫歯の治療で麻酔をかけた後触るとざらざら感じたことがあると思います。また冷たい水に手を長く入れた時は痛くなり、その後暖かいお湯に入れると軽くぴりぴり感じることがあります。これらは原因がはっきりしており、誰も心配はしません。また中腰で重いものを持った後、足がしびれたり、お尻から足の甲に走る痛みがある場合は腰椎椎間板ヘルニアで、腰痛がひどく、周りの人もなったことがあり真っ直ぐ整形外科を受診します。神経内科を受診する場合、多くは手がしびれてアタル前触れではないか、アタッタのではないかと心配されてくる方が多いようです。でも結論を先に言うと手のしびれだけの脳梗塞や脳出血は多くはありません。

よくあるケースを紹介しましょう。魚の加工場で働いていた女性が頭痛と右手のしびれを訴えて受診してきました。頭痛は後頭部が締め付けられるような、また頭全体が鍋をかぶったような、鉢巻きを強くした様にビシーッと締め付けられる痛みで、ひどくなると額やこめかみがずきずきするそうです。しびれは右手の指先で二番目と三番目で、しかも夜目が覚めると痺れている。夜ですしますます不安になる。ただしびれは数年前にもあり、頭痛も以前から時々あったとのことです。

ここで神経内科医はどう考えるかというと、まず頭痛としびれを切り離して考えます。頭痛は首の姿勢の問題で出る緊張型頭痛で特に長時間顎を突き出すような姿勢をとるとなります。しびれは手首の関節の所で神経が圧迫されたためなのです。正中神経、これは腕の真ん中を走るためこういう名前なのですが、手首の所でちょうど靱帯と骨でトンネルの様になりそこを腱と一緒にくぐりますが、その腱が手首の使いすぎで太くなり神経を圧迫するためしびれてくるのです。腱鞘炎(俗にソロデと言われます)の既往歴がある方が多く、この方もよく聞くと以前手首を痛くしたことがあり、我慢をして手を使っていたことがあったようです。また夜寝ている時手首を曲げていて圧迫がさらに強くなるため、しびれで目が覚めるのです。進むと親指から薬指までしびれ、親指の下の手のひらの筋肉がやせてきますが、殆どの場合は小指以外のどれかがしびれる程度です。手術が必要な場合もありますが、大抵は夜寝るときに手首が曲がらないような装具で症状はよくなります。

この様な圧迫性の神経障害としては肘の所で尺骨神経が締め付けられて起こる肘部管症候群による障害、この場合は4番目と5番目の指が痺れます。腕枕などで腕の裏側でとう骨神経が障害される場合も親指と人差し指の間を中心に手背しびれますが、この場合は手を反らすことが出来なくなり(うらめしやの手です)しびれよりはそちらの方を訴えることが多い様です。また頸随(頸椎の部分の脊髄)の障害でも痺れが起きます。特に年をとると頸椎自体が変形して脊髄やそこから出る神経の根っこの部分を圧迫し手がしびれる場合も多いです。もちろん脳や脊髄の腫瘍や神経内科で扱うような特殊な病気でも手のしびれは生じますが頻度は少ないです。

最後にアタリ、脳梗塞や脳出血について話しますと、基本的にこの場合は半身がしびれ、また麻痺を伴うことが多く手のしびれのみでアタッタ心配は殆ど要りません。ただ例外があり同じ側の手と口角が一緒にしびれる場合は小さな脳梗塞や脳出血の事があります。もちろん治療は必要ですが、病巣が小さいため特に病状は進行せず重症化の心配は殆ど要りません。手のしびれが気になった方は神経内科でもよいですし、整形外科、脳外科、主治医の先生でもよいですから気軽に相談してみて下さい。

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