閉じる
HOME
診療科のご案内
当院のご紹介
ご来院の皆様
採用情報
診療科・各部門
各種ご案内


HOME ≫ 各種ご案内 ≫ 広報誌のご案内 ≫ うみねこ通信 ≫ バックナンバー ≫ 平成15年5月号

うみねこ通信 No.47 平成15年5月号

海外巡回健康相談-インドネシア-

看護副部長  千葉 三枝

平成15年2月3日~16日までの2週間、海外巡回健康相談でインドネシアに行きました。この健康相談は、「労働福祉事業団」が海外在留邦人の医療不安解消のために行っている事業の一つで、全国の労災病院を設置・運営している労働福祉事業団が委託されて実施しているものです。医師2人、看護師1人、事務スタッフ1人の4人が1チームで、開発途上国へ毎年14チーム、約70都市を巡回しています。

今回私は、浜松労災病院医師、産業医科大学病院医師、労働福祉事業団事務スタッフと共に、インドネシアの4都市(バタム・メダン・スラバヤ・バンドン)をまわり、在留邦人280名の健康相談を実施しました。現地の日本人会や領事館の方が準備してくれた日本人学校やホテル内の部屋等を相談会場として、身長、体重、血圧測定、検尿の他に、必要な人には血糖、心電図、ぎょう虫、寄生虫、子宮頸癌等の検査を行い、必要な薬の提供を行いました。

現地には安心して受診できる医療機関は少なく、薬も手に入りにくい状況で、長期に滞在している在留邦人、特に小さい子供さんのいる母親は、「話を聞いてもらうだけで安心する」「日本の薬を持ってきてくれるのがうれしい」と、年1回のこの健康相談を待ち望んでいました。

現地で暮らす日本人の健康管理上で気になった点は以下のとおりです。

  • 治安が悪く移動はすべて運転手つきの自家用車で行うため運動不足になっている。家庭の主婦についても食事と掃除担当の2人のメイドと運転手がいる生活をしており、体を動かす機会が少ない。
  • 衛生状態が悪く、下痢や食中毒等消化器感染症に罹りやすい。このため、飲み水だけでなく歯磨きにもミネラルウオーターを使ったり、屋台の食べ物は食べない等の注意をしている。腸チフスや蚊を媒介して感染するデング熱で入院している人もいた。
  • 食事は油っこく味の濃いものが多い。味付けは甘味が強く、果物も豊富でおいしいため糖分の摂取が多くなりがちである。
  • 日本人2、3人で現地の人を数百人雇っており、宗教や風習の違いで戸惑いが生じ慣れるまで大変である。また、危険で自由に出歩けないため行動範囲が狭められている。このため、言葉の問題や人間関係でのストレスが多い。

以上のように、日本での生活では考えられないことが多いのですが、急がずにのんびりとキラキラ(インドネシア語で適当に)な生活に慣れると、物価も安いし帰国したくないと思う人も多数いるようです。  また、日本人学校の子供たちも、みんな明るくのびのびしています。学校は鉄条網で囲まれ、登下校は家族の車での送迎がなければできず、自由に行動範囲を広げることができません。しかし、インドネシアでの生活を楽しいと答える子供が大勢いました。

インドネシアは年中気温30℃近い暑さであり、私たちが行った2月は雨期で、激しい雷を伴うスコールには驚かされました。貧富の差が激しく、都市によっては電気も水道もないバラック小屋が立ち並んでいるのを見かけました。見学させてもらった2箇所の病院でも貧富の差は明確でした。市立の病院では、患者さんはスポンジのはみ出た古いマトレスに寝ており、医療機器も埃を被っていました。ここでは救命の治療は望まず、安らかに眠れるようお祈りすることが主流になっています。海外青年協力隊員の看護師は、清潔、不潔を教えている段階であると話してくれました。一方、私立の病院は日本の病院と変わらない設備でそれなりの医療が行われていましたが、こちらはかなりの入院費が必要となります。

朝から夕方まで健康相談、夜は日本人会や領事館の人との懇談会。そして、ひたすら都市から都市への移動とハードなスケジュールでした。しかし、はじめてあった4人がはじめての国で協力し合って仕事ができたこと、発展途上国の生活・医療を垣間見ることができたこと等、貴重な体験ができました。機会があったら又出かけたいと思います。

このページの先頭へ