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うみねこ通信 No.64 平成16年10月号

ウイルス感染と細菌感染の違いについて

小児科部長  金城 学

今回は、ウイルス感染と細菌感染の違いと、それに関連した小児科外来での、ちょっとした思い込みについてお話しします。

午前中小児科外来を受診されるお子さんは、発熱や咳などの、いわゆる風邪症状を伴った場合がほとんどです。正式には上気道炎といいますが、簡単にいうとウイルス感染細菌感染に分けることができます。それぞれ何十種類もウイルスや細菌があって、症状も異なるのですが、一般に、ウイルス感染は症状が軽く、自然に治ってしまう、かつ抗生剤は全く効果がないという特徴をもっています。逆に細菌感染は症状が強く、自然に治るとは限らず、こじらせて入院となってしまうこともあります。但し、(現時点ではですが)必ず効く抗生剤があります。ですから私達小児科医は細菌感染よりも、むしろたちの悪いウイルス感染(例えば麻疹やインフルエンザなどがあります)のほうがより神経を使います。幸い、外来を受診される子供達のほとんどが、(言い方は変ですが)たちの良いウイルス感染例です。保育園や幼稚園にはいりたてのお子さんがしょっちゅう風邪をひいて受診するのも、ほとんどがたちの良いウイルス感染によるものです。幼稚園でお互いにウイルス感染を移しあってだんだん体内に免疫ができて強くなっていくのです。ですから、明らかにウイルス感染と判断できるお子さんが受診した場合は、抗生剤を出さずに自然に回復するのを手助けする治療が主体となります。それに、不必要に抗生剤を使いすぎると、耐性といいますが後で本当に必要な時に効かなくなることもあります。

外来でのやりとりでよくあることですが、この子は抗生剤を飲まないと治らないとか、前回はこの抗生剤が効かなかったので今回は別のをとか、さらには抗生剤の点滴をしないと絶対に熱が下がらないと訴えるお母さんたちがいます。そういった場合に今回は必要ないですよと説明するのはお互いに結構、時間と体力を要します。根負けしてしまうこともあります。全国的に昔から小児科医は抗生剤を使いすぎといわれており、最近になってようやく不必要な使用は避けようという気運がでてきました。私達労災病院小児科も、時間はかかっても地道に努力していかなければと思っています。

さらに、ウイルス感染に関連する思い込みの1つに、開業の先生の所で薬をもらったが全然治らないので当科を受診したというケースがあります。これは図を使って説明します。横軸が症状が出てからの日数、縦軸が症状の強さを表しています。たちの良いウイルス感染の場合、先程述べたように自然に回復してきますので、図のように症状の強さは上に凸のカーブを描きます。あるお子さんがAの段階で、ある小児科医院に行った場合、薬をもらってもまだ山の途中ですから、すぐに治るわけではなく、印象としてこの薬は効かないと思ってしまいます。これは小さなお子さんをもつ親の気持ちとして無理もないかなとは思います。それで、Bの時点で労災小児科を受診したとします。Aで出された薬とほぼ同様の薬を出しても自然経過で治ってしまいますので、結果的にA先生の所の薬は効かなくて労災病院で出された薬はすごく効いたと勘違いしてしまいます。実際の所、小児科開業医の先生方と労災病院で出す薬には、ほとんど差がないことのほうが多いのです。このことを外来で説明するのは先程よりもさらに時間と体力を要します。説明するタイミングも難しく、Aの段階でお話ししても大体の場合、馬耳東風となってしまいます。でも、そう思っているお母さん方は案外多く、正しい治療を正しい理解のもとで行なうためにも、将来本当に健康なお子さんに育てるためにも、さらには開業小児科の先生方の名誉のためにも私達は一生懸命、説明しなければと思っています。

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