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うみねこ通信 No.59 平成16年5月号

肥 満

健康診断部部長  宮澤 正

肥満は消費エネルギー(体を維持したり、運動するために必要なエネルギー)より、摂取エネルギー(食物から得られるエネルギー)が多いと、余ったエネルギーが脂肪として人体に蓄えられることによって起こります。

現在、日本では2000万人以上の人に肥満が認められています。さらに、その半数の人に、糖尿病・高血圧症・高脂血症・虚血性心疾患等の余病があることがわかりました。

この原因は、戦後の食生活とライフスタイルの変化によるところが大きいとされています。現在、日本人一日あたりの動物性脂肪の摂取量は、昭和30年ごろと比較して4倍以上、肉の摂取量は6倍以上となっています。これにくらべて米の摂取量は半分以下となっています。食事全体のエネルギー量があまり変わっていないことから、穀物主体の食生活から肉食に変化したということになります。

食生活の変化

また、経済のグローバル化によって、生活・仕事のテンポが速くなっているため、食事時間が不規則になったり、短縮されたりすることが多くなっています。それと同時に、ファーストフード・冷凍食品・レトルト食品の利用も多くなっており、カロリー摂取過多に陥りやすくなっています。その他には、車社会等による運動不足も重大な問題と考えられています。

アディポサイトカインそれでは、なぜ肥満の人に、糖尿病・高血圧症・高脂血症が合併しやすいのかという疑問が生じます。最近、この疑問を解き明かすような研究成果が発表されるようになってきました。従来、皮下脂肪に代表されるような脂肪組織は、単に脂肪を蓄えるためにだけ存在すると思われてきましたが、どうもそうではないらしいのです。人の脂肪細胞からは、肥満を防止するような物質や、人間に不可欠なインスリン(注1)の働きを助けるような物質、反対に妨害するような物質等が血液に分泌されていることがわかりました。これらの物質を総称してアディポサイトカインと呼びます。肥満になるとこれらの物質の分泌に乱れが生じ、代謝の状態は人体にとって不利益な方向に向かいます。その結果、細胞に対するインスリン作用が低下する「インスリン抵抗性」が生じ、高血糖状態・高血圧状態・高脂血症状態が進展することになります。このため、肥満は糖尿病・高血圧症・高脂血症を起こす引き金と考える必要があり、これらの病気が起こる前に是正しておく必要があります。

肥満の解消には、食生活の改善と運動が不可欠です。
  • 食事量は生活していくうえで必要なエネルギー量をまもりましょう。
    標準体重(kg)(注2) × 25~30 kcal
  • 1日3食、朝食をしっかり摂り、夕食は少なめにしましょう。
  • ご飯は一膳、できるだけ多くの種類の食品をバランスよく摂り、おかずの取り過ぎ、濃い味付けは注意しましょう。
  • 肉は脂肪分の少ないものを選択し、青身の魚類を多く摂りましょう。
  • 植物性のタンパク質も利用し、緑黄色野菜は毎日摂取しましょう。
  • 植物性脂肪には、コレステロール・中性脂肪を低下させる多価不飽和脂肪酸が多く含まれています。
  • 運動を開始する前に、メディカルチエックを受けましょう。
  • 40%以上の肥満の場合は、食事療法で体重を低下させてから運動しましょう。
  • 最大心拍数の40~60%程度の運動を最低20分間,週に3回以上が必要です。
  • 自覚的に、楽から~ややきつい、少々汗をかく位の運動。(体力のない人で、散歩程度、体力のある人ではジョギング程度)
*注1
インスリン:膵臓から分泌されるホルモンで細胞のブドウ糖取り込みを促進し血糖値を下げる。中性脂肪・蛋白質の合成を促進する。
*注2
標準体重:身長(m) X 身長(m) X 22

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