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健康診断部部長 宮澤 正
肥満は消費エネルギー(体を維持したり、運動するために必要なエネルギー)より、摂取エネルギー(食物から得られるエネルギー)が多いと、余ったエネルギーが脂肪として人体に蓄えられることによって起こります。
現在、日本では2000万人以上の人に肥満が認められています。さらに、その半数の人に、糖尿病・高血圧症・高脂血症・虚血性心疾患等の余病があることがわかりました。
この原因は、戦後の食生活とライフスタイルの変化によるところが大きいとされています。現在、日本人一日あたりの動物性脂肪の摂取量は、昭和30年ごろと比較して4倍以上、肉の摂取量は6倍以上となっています。これにくらべて米の摂取量は半分以下となっています。食事全体のエネルギー量があまり変わっていないことから、穀物主体の食生活から肉食に変化したということになります。
また、経済のグローバル化によって、生活・仕事のテンポが速くなっているため、食事時間が不規則になったり、短縮されたりすることが多くなっています。それと同時に、ファーストフード・冷凍食品・レトルト食品の利用も多くなっており、カロリー摂取過多に陥りやすくなっています。その他には、車社会等による運動不足も重大な問題と考えられています。
それでは、なぜ肥満の人に、糖尿病・高血圧症・高脂血症が合併しやすいのかという疑問が生じます。最近、この疑問を解き明かすような研究成果が発表されるようになってきました。従来、皮下脂肪に代表されるような脂肪組織は、単に脂肪を蓄えるためにだけ存在すると思われてきましたが、どうもそうではないらしいのです。人の脂肪細胞からは、肥満を防止するような物質や、人間に不可欠なインスリン(注1)の働きを助けるような物質、反対に妨害するような物質等が血液に分泌されていることがわかりました。これらの物質を総称してアディポサイトカインと呼びます。肥満になるとこれらの物質の分泌に乱れが生じ、代謝の状態は人体にとって不利益な方向に向かいます。その結果、細胞に対するインスリン作用が低下する「インスリン抵抗性」が生じ、高血糖状態・高血圧状態・高脂血症状態が進展することになります。このため、肥満は糖尿病・高血圧症・高脂血症を起こす引き金と考える必要があり、これらの病気が起こる前に是正しておく必要があります。
肥満の解消には、食生活の改善と運動が不可欠です。