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うみねこ通信 No.76 平成17年10月号

「大動脈瘤」について

心臓血管外科  小野 裕逸

心臓から拍出された血液は「動脈」を通って、全身のさまざまな臓器へ導かれます。この中で最も太い動脈が「大動脈」で、心臓を出てから背中側を下行し、およそ臍の高さまでの間に何本もの血管を分枝しつつ走行します。太さは約20㎜前後です。この大動脈がふくらんで「こぶ」になった状態が、大動脈瘤です。

大動脈瘤には、その発生様式から主に①真性大動脈瘤、②解離性大動脈瘤のふたつに分けられます。また、発生する部位により胸部大動脈瘤や腹部大動脈瘤といった分類のしかたもあります。外傷などの特殊な要因を除けば、原因はほとんどが動脈硬化です。動脈硬化は血管が「硬い」と感じがちですが、硬いところと脆いところとが混在します。血管の壁の弱いところが拡張してくる病気、それが大動脈瘤です。

大動脈瘤と診断されるのはどういった時でしょうか。真性大動脈瘤は多くの場合、無症状です。動脈瘤の発生部位によっては、声がかすれたり、咳が続いたりということもありますが、破裂して初めて痛み、気を失うなどの症状が現れ、急速にショック状態に至り突然死の原因にもなりえます。偶然、レントゲン写真で異常を指摘された、おなかの超音波検査で指摘されたなど、他の病気についての検査中にみつかることが多いと思われます。一方、解離性大動脈瘤は血管の壁に沿って数十㎝にもわたって裂け目が走る病気ですから、発症時にほとんどの場合、かつて体験したことのないような激烈な胸部・背中の痛みを伴います。心臓に向かって解離した場合には大動脈弁閉鎖不全や心筋梗塞、心タンポナーデ(心臓の周囲に血液がたまり心臓は圧迫され動けなくなる)、頚部の動脈をも巻き込んで脳梗塞を生じるなどの症状も起こります。解離性大動脈瘤は故石原裕次郎氏が罹患した病気でもあります。

診断を確定づける検査はCT検査です。これにより大動脈瘤の種類と部位、破裂の有無、治療方針(緊急手術が必要か否かを含めて)が決定されます。大動脈瘤があるというだけでは必ずしも手術の必要はありませんが、自然に消失する性格のものではありません。動脈硬化を促進する因子の是正、すなわち生活習慣の改善が大事になってきます。食事の注意や運動、禁煙、高血圧や糖尿病のある方でしたらこれらを治療しつつ、これ以上大動脈瘤を大きくしないように気をつけることが望ましいと考えられます。というのは破裂の危険性は大動脈瘤の大きさに比例して増していくからです。

破裂により無症状の状態から、症状が一変します。激しい痛みとともに血圧が低下してショック状態となります。動脈瘤の部位によっては血を吐いたり、血便が出たりということも稀にあります。真性、解離性の両者とも破裂(=体の中での大出血)をしてからの手術治療では救命が困難なことも少なくありません。通常の診察のみでは大きさの変化をとらえることはできませんので、専門医のもとで定期的にCT検査を行っていく必要があります。
ある程度の大きさになれば、破裂を予防するために手術治療が必要です。大動脈瘤の根本的な治療は瘤を切除することと、人工血管により新たな血液の通り道を作成することです。手術治療の危険性は大動脈瘤の部位や緊急手術か否かなどで大きく異なりますが、術後の合併症もなくお元気になられた場合には、ほぼ手術前と同様の生活を送ることができるようになります。

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