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主任診療放射線技師 岩本 芳子
よくテレビなどで放射能と放射線を混同して用いていることがありますが、両者には、はっきりとした違いがあります。
放射能とは、ある種の不安定な原子核が放射線の放出を伴いながら別の種類の原子核に変化する性質のことをいいます。「放射能」のかわりに「放射性」という言葉でも使われており、このような物質を放射性同位元素と呼び、アイソトープ検査(RI)に用いられています。
放射線とは、いろいろな種類の粒子線や電磁波の総称です。放射性同位元素から出てくるガンマ線やベータ線、アルファ線、人工的に作るエックス線のほかに地球に降り注ぐ宇宙線も含みます。放射線は、現代の臨床医学において幅広く応用されており、診療に大きく貢献しています。中でもいちばん医学に利用されているのが、よく知られているエックス線です。
放射線と放射能の関係は、例を挙げれば、電球と光のような関係です。放射線は、電球からの光に相当し、放射能は電球がもっている光を出す能力、性質、つまり、放射能は放射線を出す能力、性質ということになるのです。放射能は時間の経過とともに減少していきます。
視覚、聴覚、臭覚などにより私たちは色々な物質を判別できます。しかし、放射線は五感で感じることができないため、不安に思うのではないでしょうか。日本は、世界で唯一の被ばく国です。広島、長崎などから怖いというイメージが常にあると思います。しかし、自然界には自然放射線が存在し、私たち人類(生物)は、その発生以降、自然放射線を受けながら生活しています。中国の自然放射線が強い地域の住民の健康調査結果では、他の地域住民と比較しても、がんになる人や子どもの遺伝性疾患の割合に差は生じませんでした。
以下にヒトが1年間に被ばくする線量を示します。
総線量 | 自然放射線 | 医療被ばく | |
---|---|---|---|
世界 | 2.95 | 2.35 | 0.6 |
日本 | 3.80 | 1.45 | 2.35 |
胸の写真を1枚撮影すると約0.06ミリシーベルトですので、自然放射線に比べると本当に少ないのです。
当院では、六ヶ所の日本原燃株式会社から傷病者を受け入れる体制作りをしています。緊急時に搬送されてくる患者様は、予め、洗浄などの処置が施されています。患者様の被ばく線量は、0.1ミリシーベルト以下と微量ですので治療にあたる医療スタッフはもちろんのこと、周辺住民の皆さまへの影響はありません。
健康診断で来られた患者様から、胃の透視検査や胸部写真を撮るときに、「放射線を浴びて大丈夫ですか?」とよく聞かれます。被ばく線量は自然放射線による被ばくと同等かそれ以下の線量ですので、放射線の影響よりも検査による利益(メリット)の方が大きいのです。特に、乳がんは、最近の日本において女性の死亡原因の上位にランクされています。乳がんの発見には、エックス線による乳房撮影検査が重要な役割を担っています。さらに定期的な健康診断を受けることで、早期発見が可能になるのです。
私たち診療放射線技師は、医療現場で放射線の有効利用を担当する専門職です。
検査を行うときは、不必要な被ばくをさせないことは、もちろん、被ばく線量を出来るだけ少なくする努力をしています。皆さまが、健康で豊かな社会生活を営むことができるように利益と損失のバランスを考慮して日々の業務に携わっておりますので、安心して放射線による検査を受けてください。