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健康診断部部長 宮澤 正
【メタボリックシンドローム】とは、直訳すると、【代謝症候群】となるのですが、こう言われるとなんの事だかますます解りませんよね。
もともとは「成人病」と呼ばれていたものが1996年12月の厚生省の公衆衛生審議会で「生活習慣病」へ名称変更され、約10年後にまたもや変更・分類され、皆様に解り難い疾患名となって登場したのです。
そもそも「代謝」という言葉は、「新陳代謝」という言葉と同じです。
これだと頷かれる方も多いのではないでしょうか?人間は生きるために、「自然」から頂いた食物を摂取し、体組織の材料として利用し、エネルギーとして消費し、また、一部は体内に飢餓用として貯蔵し、不用になったものは、「自然」にお返しするというシステムを持っています。
また、このシステムは、細胞の遺伝子に刻み込まれたプログラム(約200~300億個の記憶情報といわれます。)によって制御され、たくさんの酵素の力で働いていることが知られています。このシステムの働きを医学的に「代謝」と呼んでいます。
つまり、【メタボリックシンドローム】とは、この働きが阻害された状態を言うのです。なかでも、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を引き起こす危険性が高く、正常ではない代謝状態が続いていることを意味します。
この状態では、内臓脂肪型の肥満が認められ、脂肪組織から出されるアディポサイトカインと呼ばれる物質の分泌異常が起こります。この異常のため、体内でブドウ糖を利用し、血糖値を下げる働きをもったインスリンというホルモンの作用が低下します。(図1参照)
このことを、《インスリン抵抗性》と呼び、【メタボリックシンドローム】の主な要因であることが分かってきました。
《インスリン抵抗性》が存在すると、血中脂質異常、血圧高値、高血糖を複数合併するような状態が出来上がってしまうと解釈されています。また、今まで生活習慣病と呼ばれてきた、「糖尿病」、「高血圧」、「高脂血症」、「肥満」が関与する多くの病態を個々の独立したものと捉えるのではなく、『病態は様々ですが、「共通の原因」から起きている「病気の集まり」として捉えていきましょう。』という考え方なのです。
高コレステロール血症に対する対策がほぼ確立された現在、【メタボリックシンドローム】は、心筋梗塞や脳梗塞を予防するための重要な研究課題となっていますが、内蔵型肥満の指標となるウエスト値が、男性では厳しすぎて、国民男性の50%以上が「メタボリックシンドローム」の予備軍となってしまうため、現在、論争中です。
CTスキャンで体の横断写真を撮影し、内臓脂肪と皮下脂肪の面積を比較します。
内臓脂肪と皮下脂肪の面積比が0.4以上の場合、合併症の頻度が高いことが明らかになっています。これが、内臓脂肪型肥満です。内臓脂肪面積が100cm2を越える人は、メタボリックシンドロームの予備軍とされます。