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うみねこ通信 No.90 平成18年12月号

心筋梗塞の危険因子と心筋梗塞を防ぐライフスタイル

循環器呼吸器内科第三部長  吉田 一弘

心筋梗塞は、心臓に酸素と栄養を送る冠動脈が血栓などで急に閉塞することにより、心筋の一部が壊死してしまう病気で、大変死亡率の高い病気です。心筋梗塞による死亡のうち50%は、まだ病院に到着していない可能性が高い2時間以内におこり、入院後の死亡率は約10~20%(最近では6.5%前後)です。このため、心筋梗塞と思われる症状が出たときは、一刻も早く(夜中でも休日でも)設備の整った病院に行くべきです。心筋梗塞は死亡率が高い病気であるばかりでなく、心筋梗塞によりダメージを受けた心筋は再生しないため、予め危険因子をよく熟知し、正しいライフスタイルを送ることにより心筋梗塞にならないことがより重要です。今回は、心筋梗塞の危険因子と心筋梗塞を防ぐライフスタイルについて話したいと思います。

心筋梗塞の主な危険因子は、地理的、人種的な差や、年齢、性別に関わらず、全世界共通であることが、カナダの研究者たちにより明らかにされました。それぞれの危険因子を持っている人が持っていない人の何倍心筋梗塞になりやすいかを示すオッズ比は、喫煙(2.87)、高血圧(1.91)、糖尿病(2.37)、腹部肥満(1.12)、心理社会的要因(ストレス)(2.67)、野菜と果物の日常的な摂取(0.71)、週3回程度の適度な飲酒(0.91)、定期的運動(0.86)となりました。これらの危険因子を用いれば、全世界の心筋梗塞症例の90%を予測できるということです。

ここで、ストレスのオッズ比が意外と高いのが目につきます。心理的、社会的要因、すなわち種々のストレスが冠動脈疾患の発症に関係するとの報告はこれまでにもありましたが、職場でのストレスが時々感じられるケースでのオッズ比1.38、持続的ストレスがある場合は2.14、家庭でのストレスを時々感じる場合は1.52、継続的だと2.12という結果となりました。深刻な金銭的ストレスがあるケースのオッズ比は1.33、生活上でストレスとなる出来事が何度もあった場合は1.48、うつ傾向があるケースは1.55となり、これらの差は、地域、人種、男女に関わらず見られました。得られた結果は、ストレスの急性心筋梗塞発症への関与の度合いは、喫煙よりも少ないのですが、高血圧や腹部肥満と同レベルかそれ以上であることを示しております。つまり、心理的、社会的要因を改善する方法を開発する必要性が明らかになった訳です。

次に心筋梗塞を防ぐ食事とライフスタイルについて話したいと思います。2002年に、アメリカ心臓協会(AHA)のサーキュレーション誌の“現在の展望” 欄に、エビデンスに基づく、心筋梗塞を予防するために必要な食事とライフスタイルに関する声明が出されました。(Circulation 105 893-898. 2002)今までに発表されてきた文化圏の異なる世界各地での研究の成果を踏まえて、以下のような勧告がされています。

もっとも重要なライフスタイルの要因は、
  1. 喫煙しないこと
  2. 飲酒するのであれば、適量にとどめる
  3. 一日に最低30分、中等度以上の運動(早足の歩行、自転車、ガーデニングなど)を毎日すること
もっとも重要な食事の要因は、
  1. 肥満しないようにエネルギーのバランスをとるBMI(body mass index:体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数値で、日本人の場合22が標準)が25を超えないようにする。
  2. 飽和脂肪酸からのエネルギーを全体の10%未満にする
  3. トランス脂肪酸からのエネルギーを全体の2%未満にする
  4. 脂肪の多い魚を週に最低1回食べること
  5. 1日に合計400g以上の野菜と果物を食べること
  6. 食塩の摂取を1日6g未満にする(日本人は平均で1日あたり約13gの食塩を摂っているといわれます)。

これらの勧告を守れれば、70歳以下の心筋梗塞の大部分は防ぐことができると言われています。このように危険因子について熟知し、正しいライフスタイルを送ることによって心筋梗塞を防ぎましょう。

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