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歯科口腔外科部長 中山 勝憲
体にできる石といえば、まず思い浮かべるのは胆石・腎結石・尿管結石などでしょうか?「首に石!」と聞いて、何それ?と思う人がほとんどでしょう。正確には顎の下に石と言った方がいいかも知れません。しかし八戸地域では首に石ができる方がとても多いのです。
人間には耳の下から顎の付け根にかけて、耳下腺・顎下腺・舌下腺などの大唾液腺が6つ存在します。そこでは一日約1.5リットル(一升瓶一本程度)もの唾液が作り出されています。その中でも首(顎の下)に存在する顎下腺は唾液の粘りが強いため、石ができることが多く、顎下腺唾石症!と呼ばれています。唾液にはカルシウム・リン・マグネシウムなど様々な物質が含まれており、それが固まると唾石となります。歯周病の原因である歯石を取って貰った経験を持つ方は多いことでしょう。歯に付着して固まったものは歯石、体内で固まったものは唾石と呼ばれ元は同じ物なのです。ただし、体内で固まる場合には様々な問題を引き起こします。その最たるものは窒息です。腫れがノドを圧迫し重篤な症状を引き起こすこともあるのです。
唾石症は液体である唾液が長い年月を経て石灰化するために発症初期には粘土のような固まりに過ぎません。よってレントゲンにも写らず、通常検査では発見されないことも多く、幾つもの病院を巡る方も少なくありません。そこで、その特徴的症状を記します。
つまり、食べ物を前にして唾液が口の中に出ようとしても、途中に石が引っかかっているために唾液が出ることができず唾液腺の内圧が上がり痛みや腫脹を生じる訳です。しかし、発症初期には症状が自然に落ち着くことから放置されることも多く、唾石が3~4cmと巨大化したり20~30個の大量の唾石が作られてから受診する方も少なくありません。当然、症状が軽いうちなら口の中から小さな切開で摘出可能で日帰りもできます。しかし症状が重くなると入院下に全身麻酔で首から摘出せざるを得ないわけです。当科で治療する顎下腺唾石症の9割以上は全身麻酔での摘出を要する患者さんです。つまり進行してから受診している方がほとんどなのです。
貴方は食事の際に顎の下が痛むことはありませんか?食事のたびに首が腫れたことはありませんか?症状が持続せず治ったように感じるのがこの疾患の最大の特徴です。何かおかしいと疑ってみることがこの病気を悪化させない予防法です。過去にそのような経験がある方は一度検査を受けられることをお勧めします。