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小児科第3部長 遠野 千佳子
この冬、小さなお子さんたちを中心に、何日も高い熱が続くかぜが流行しました。病院を受診された方の多くはおそらく“咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)”“プール熱”、あるいは“アデノウイルス感染症”という病名をお聞きになったのではないでしょうか。インフルエンザでもないのにこんなに高い熱が続いて、しかも早く治す薬もないとはいったいなんだろう、と思われた方もいらっしゃることでしょう。今回はその咽頭結膜熱についてお話します。
咽頭結膜熱は、いわゆる“夏かぜ”と呼ばれる感染症のひとつで、プールを介して流行することが多いのでプール熱ともよばれます。また、結膜炎を引き起こし、はやり目とよばれることもあります。病気の原因はアデノウイルスというウイルスの一種ですが、このウイルスにはいくつもの型があり、型の違いによって出現する症状もその重症度も異なってきます。目やのどの粘膜について感染し、炎症を起こしますが、症状が出ないこともあります。こどもはまだウイルスに対する免疫が十分できていないため、症状が強く出るのです。プールの水を介して集団感染することがよく知られていますが、せきやくしゃみ、ウイルスのついた手に直接さわることや、感染者の使っていた食器やタオルを共用することなどでもうつります。“夏かぜ”の代表的な病気ですが、1年を通して発生し、今回のように冬場に流行することもあります。
発熱、咽頭炎、結膜炎が主な症状ですが、全部そろわないこともあります。乳幼児では、嘔吐や下痢を伴うことがよくあります。この冬当科を受診されたお子さんたちの間では発熱のみの例、上気道炎、気管支炎を伴う例、さらに嘔吐、下痢を伴う例が比較的多くみられました。
その他、一般的なかぜの症状(頭痛、寒気、食欲不振、咳、鼻水、リンパ腺のはれ、など)もみられます。まれに肺炎をおこし重症化することがあります。
特別な治療はありません。インフルエンザのような特効薬がないので、もどかしく思われるかもしれませんが、保育園や幼稚園に通園できるくらいの通常の免疫力のあるお子さんであれば、1週間前後で症状は自然に軽快し、10日前後で完治します。口の中の痛みや、高熱での全身のだるさに伴う食欲不振により水分が不足し脱水症になることがありますので、水分摂取には十分注意が必要です。
手洗い、うがいが最も有効な予防法です。感染者とのタオルの共有はやめましょう。
法律上は、熱やのどの痛みなどの主な症状が消えて2日経過するまでが出席停止です。実際は、小さいお子さんであれば特に、元気になるまでさらに数日間は安静が望まれます。ウイルスそのものの感染力は弱まりますが、3週間程度は体内にとどまりますので、プールに行かれている方は他の方にうつさないためにもひと月間はお休みが必要でしょう。
こどもの間では次から次へといろいろな感染症が流行します。予防の基本はいつでも、どの感染症でも、十分なうがいと手洗いです。かぜの流行期だけ気にするのではなく、日常生活のなかで普段から自然に予防ができるように、ご家族そろってうがい、手洗いの習慣作りに取り組ませることをおすすめします。