閉じる
HOME
診療科のご案内
当院のご紹介
ご来院の皆様
採用情報
診療科・各部門
各種ご案内


HOME ≫ 各種ご案内 ≫ 広報誌のご案内 ≫ うみねこ通信 ≫ バックナンバー ≫ 平成19年9月号

うみねこ通信 No.99 平成19年9月号

過敏性腸症候群(下痢型)

消化器内科部長  品川 博樹

非常に緊張した場面などで、急に腹痛や便意を感じたことがありませんか。ストレスによって、体のさまざまなところに変調をきたしますが、腸もその代表的な器官ひとつです。腸の動きは脳の働き(心理的状態)と密接に関係していることが明らかとなっていますが、実際、日常生活でもそのように感じることも多いのではないでしょうか。

検査では、異常がないのに、下痢と腹痛をきたし、その症状がある期間くりかえして起こる場合は過敏性腸症候群(下痢型)かもしれません。簡単にいえば、腸が過敏に反応して動くということです。性格的に几帳面な人に多い傾向がみられますが、必ずしも性格と一致するわけでもありません。過敏性腸症候群には、下痢型のほかに、おもに便秘と腹痛をきたす便秘型や、下痢と便秘を交互にきたす便秘交替型もありますが、今回は下痢型について説明します。

①腹痛を伴う下痢がある ②排便により腹痛が軽減する ③腹部を暖めると腹痛が軽減する ④睡眠中は下痢がない ⑤急に便意を催すことがある ⑥食事中に便意を催すことがある ⑦電車などの限られた場所で腹痛を感じやすい ⑧血便はない ⑨粘液のような便が出るなどの症状が比較的多くみられます。しかし、これらの症状はそのときの体調の変化により、ごく普通にみられる症状でもあります。問題はその頻度で、とくに日常生活に支障があるかどうかだと思います。これらの症状があっても日常生活に支障がなければ、あるいは自分自身である程度症状をコントロールできていれば、「ちょっとお腹が弱い」程度で済んでしまうことも多いと考えられます。自分自身で、たとえば冷たいものを飲むと悪化するとか、このお酒を飲んだあとに下痢するなどの特徴がわかっていれば、日常生活で注意することも大切です。一般的には唐辛子などの香辛料や脂肪の多い食事で悪化することが多いようです。まずは症状にあわせて、注意しながら生活していくことが非常に大事な病気であると思います。

過敏性腸症候群では内視鏡などの検査をしても異常は認められません。言い換えると、検査で明らかな異常がみられないにもかかわらず、上記のような症状をきたす場合に過敏性腸症候群(下痢型)と診断されることになります。少なくとも、それまでの症状に変化がでてきたり、40歳以降にはじめて症状が出現したりした場合は、まず検査で他の病気でないかどうか確認することが必要です。検査で癌などの病気や異常がないことがわかると、安心するためか、それだけで病状が軽くなることもよくあります。

症状が強い場合や不安感が強い場合は、便を硬くする薬や腸管の動きを調節する薬、不安感を和らげる薬などを投与しますが、これらの薬の力を少し借りることによって、症状が楽になることもあります。しかし、病気の程度や原因が一様ではないと考えられ、内科的な治療であまり効果が出ないときや不安感や抑うつ傾向が強いときは専門的な心身医学的治療が有効なこともあります。

このページの先頭へ