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うみねこ通信 No.118 平成21年4月号

肺炎球菌(はいえんきゅうきん)ワクチンのすすめ

循環器呼吸器内科副部長  當麻 景章

最近、肺炎の予防法のひとつとして、肺炎球菌ワクチンの接種が注目されております。今回は、聞きなれない方も多いと思います肺炎球菌とそのワクチンについて解説したいと思います。

現在、日本人の死亡原因は、癌、心臓病、脳卒中についで、肺炎が4番目になっています。効果的な抗菌剤が普及しており、死亡率の高さを意外に感じる方も多いと思いますが、65歳以上の人に限ってみると、むしろ増加傾向にあります。そして、その肺炎を引き起こす様々な菌の中で、一番多いのが肺炎球菌であり、全体の1/3を越えています。この肺炎球菌は、重症化・致命的になりやすく、さらに最近では抗菌剤が効きにくくなっているという特徴があります。そこで、肺炎球菌をワクチンで予防する試みがされるようになってきました。肺炎予防には、うがい、手洗い、入浴、運動、規則正しい生活、インフルエンザにかからないことが基本的に大切なことですが、さらに、肺炎球菌ワクチンの接種は、予防上、非常に重要であることがわかっています。例えば、ワクチンを接種した人と、しなかった人を比べると、『肺炎で重症化した人や死亡した人』は、接種した人が、しなかった人の半数以下となっています。また、インフルエンザに罹患すると肺炎を起こしやすいことが知られていますが、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを併せて接種すると、インフルエンザワクチン接種のみの場合と比べて、肺炎による死亡率が更に低下することがわかっています。特に高齢で慢性の肺の病気を持っている人は、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種を併用すると、接種なしの死亡率を100%とすると、19%に抑えられるようです(ちなみに、インフルエンザワクチンだけでも、30%に抑えられます。)。逆に、心配される副反応(ワクチンの副作用)は、主なもので接種部位への発赤と軽い疼痛が50%、発熱・筋肉痛が数%で出現しますが、何れも2~3日でよくなります。重い副反応は今のところ報告されていません。また、副反応は50歳以上では比較的少ないとされており、高齢者に対する安全性も報告されています。ワクチンに対して否定的な専門家もたしかにいますが、こういった結果を踏まえて世界では、WHO(世界保健機構)が肺炎球菌のワクチンの接種を推奨しており、予防を重視しているアメリカでは65歳以上の接種人口が45%を超えています。さらに、先進国の多くで接種を推奨し、国によっては無料で接種が受けられるようになっています(表1)。残念ながら日本では、ほとんどの方が全額自己負担で受けなければならなく、認知度が低いこともあり、接種している高齢者はわずか3%と言われているのが現状です。

肺炎球菌ワクチンの有効期間は5~8年です(インフルエンザのように毎年摂取する必要はありません)。日本では一度しか受けられません(現在、再接種できるよう添付文書改正が働きかけられているようです)。費用は基本的には自費(病院によりますが、新患で7,000~10,000円程度)ですが、脾臓を摘出した人には保険適用があります。ワクチン接種を希望する人は、かかりつけ医に相談してみてください。

肺炎予防が大切な方(65歳以上の高齢の方、心臓や肺に基礎疾患を有する方、糖尿病などで免疫状態が低下している方、脾臓を摘出した方など)は、効果も高く(表2)、特に推奨されています。ぜひ、一度、検討してみてはいかがでしょうか?

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