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うみねこ通信 No.122 平成21年8月号

小児てんかん治療について

小児科部長  大高 雅文

はじめに
発作型に基づくてんかんの治療

てんかん発作は大きく、全般発作と部分発作に分類されます。全般発作の治療では、バルプロ酸を第一選択とし、効果不十分であれば発作型に応じて、多剤併用とます。部分発作においては、カルバマゼピンを第一選択とすることが多いです。約70%の症例が単剤にて効果が得られますが、効果不十分の場合は、他剤(ゾニサミドなど)との併用療法を考慮します。

診断と治療
~分子生物学の進歩による今後の展望~
臨床遺伝学や分子生物学の進歩に伴い、てんかんの病態も分子レベルで解明されつつあり、新しい診断や治療への応用が期待されています。

薬物治療においても、イオンチャンネルや受容体レベルの作用機序の差異を考慮した抗てんかん薬の選択が可能となってきており、当科にても施行しております。最近、トピラマート、ラモトリギンなどの副作用の少ない新薬使用可能となり、当科にても使用しております。

当科において抗てんかん薬を投与中のてんかん患者様は、約150名であり、複合性熱性けいれん症例なども加えると200名位です。脳波検査は年間約300例以上施行しています。てんかんの有病率は約1%位と考えられます。ちなみに熱性けいれんは7~8%です。

てんかんの治療において大切なことは、発作が本当にてんかん発作であるかどうかということです。(てんかんの定義:いろいろな原因で起きる慢性の脳疾患で、その特徴は、脳ニューロンの過度な放電に由来する反復性の発作であり、多種多様な臨床および検査所見を随伴する。)すなわち抗てんかん薬の投与が本当に必要であるかということです。ヒステリーなどの心因性の発作もあれば、偽発作、失神、過換気症候群、脳貧血、心臓疾患(不整脈)によるケイレンもあります。脳血管障害、血管奇形(もやもや病、動静脈奇形など)、種々の脳腫瘍、熱中症などにてもけいれんは発症します。機会性発作(状況関連性発作)ともいえる、一生に数回しか発症しない、極めて発症頻度の稀なケイレンもあれば、新生児期、又は、乳児期だけの遺伝性けいれんもあります。(たとえば、良性家族性新生児けいれん。)

けいれん発作を発症して、当科、又は当院救急外来を受診時にはまず、体温を測定し、けいれん発作を観察できた人、目撃した人から詳細に発作症状を問診します。発作は極めて多種多様な症状があり、突然走り出す発作、突然笑い出す、泣き出す、突然発症する頭痛のみ、腹痛のみの発作、などもあります。けいれん疾患の家族歴、熱性ケイレンの既往、発達障害の有無、周産期の異常の有無、発作の発症した状況(何をしているとき、どんな状況で発症したか)を問診します。部分てんかんの場合は本人が発作を覚えている場合があります。可能なかぎり、早期に、血液検査、頭部MRI検査、脳波検査を施行し診断しております。

発作症状、種々の検査結果より、てんかん発作か否か、全般発作か部分発作か検索します。治療に際しては全般てんかんと部分てんかんの区別がとても大切です。脳波にて左右差が明らかで、発作波に明らかな局在がある場合は部分てんかんを疑います。また、発作起始時の局所性運動ないし、感覚徴候、自動症、また頭部MRI上の局所性脳形態異常は部分てんかんを示唆する徴候です。小児では全般か部分かというと部分てんかんが多いです。

てんかんの治療に際してその分類が大切です。分類ができれば、ある程度使用する抗てんかん薬が決まります。現在使用している分類に、国際てんかん連盟(ILAE)による国際分類があります。例えば、ILAE1981年のてんかん発作型分類では、単純部分発作、複雑部分発作、二次性全般化発作などに分けられます。また、ILAE1989年のてんかん・てんかん症候群分類では、特発性部分てんかん、症候性部分てんかん(前頭葉てんかん、側頭葉てんかん、後頭葉てんかんなど)、特発性全般てんかん、症候性全般てんかんなどに分けられます。

まとめ
  1. てんかんの診断、投薬に関して、最初は望ましくはてんかん専門医がするべきと考えられます。てんかんでない症例に抗てんかん薬を投与しない様に気をつけなくてはなりません。鑑別の困難な偽発作、心因性発作は存在し、注意が必要です。発作時脳波(ビデオ脳波同時記録)が鑑別に役立ちます。種々の抗てんかん薬を投与しても発作症状が変化しない場合は、診断の再考が必要と考えられます。
  2. 抗てんかん薬の選択に際して、てんかん発作型分類(ILAE,1981)、てんかん・てんかん症候群分類(ILAE,1989 )を施行することが望ましい。分類ができれば、選択薬は決まってきます。例えば、同じ前頭葉てんかんでも、発作症状により、選択薬は異なります。
  3. 抗てんかん薬の作用機序がわかってきたため、抗てんかん薬の併用療法も作用機序に基づく、難治性てんかんの治療となってきている。抗てんかん薬の作用機序、相互作用を熟知して、併用療法、抗てんかん薬の変更をするなら、単なる、試行錯誤(トライアンドエラー)は避けられると考えられます。また薬剤の選択に関してExpert opinion(専門家の意見、日本版、米国、欧州とあります。)との併用が良いと考えられます。

小児のけいれん性疾患にてお困りの方は当科外来を受診していただければ幸いです。

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