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うみねこ通信 No.127 平成22年1月号

顎が腐る人が増加中!

ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死 (顎骨骨髄炎)について

歯科口腔外科部長  中山 勝憲

顎が腐ると聞いてピンとこない人も多いことでしょう。無理もありません、2003年世界で初めて報告され、日本では厚生労働省が2006年に初めて注意喚起をしたばかりの新しい病気だからです。一般の方々には全くといっていいほど知られていません。しかし、現在世の中に大量に出回っている薬が原因となっているため是非とも知っておいて欲しい病気なのです。

ではその病とは「ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死(顎骨骨髄炎)」と呼ばれる疾患で、ビスホスホネート(以下BP系薬剤と略す)という薬剤を投与されている患者さんが虫歯や歯周病を理由に歯を抜いた際に、その傷口が治らず顎の骨が炎症を起こし腐っていく怖い病気です。最近では歯を抜かなくても歯周病などの慢性炎症を原因として自然発生的に顎が腐っている患者さんも散見され始めました。当科でも一昨年(2008年)ぐらいから患者さんが受診し始め、徐々に増加しつつあります。

皆さんは骨粗鬆症(こつそしょうしょう)という疾患を聞いたことがあることでしょう。加齢とともに骨が脆くなる病気です。世の中には癌(がん)の転移が原因で骨が脆くなる方もたくさんいます。BP系薬剤とは、主に骨粗鬆症や癌患者さんの治療に使われている薬剤です。特に高齢者は骨粗鬆症を発症することが多く、骨が脆くなったことが原因で骨折することも少なくありません。そこで骨を丈夫にし骨折を減らしたり、癌の骨転移を抑制する目的で使われ始めました。この薬により全身の骨は丈夫になりますが、顎の骨だけは歯が生えている特殊性からか例外だったようです。現在、国内でBP系薬剤の使用患者数は300万人とも言われ、高齢化社会の昨今その使用頻度はさらに増加することが予想されています。よって、今後この疾患が急増するのは明白とされています。

ではこの薬を使わなければ良いのかと言えばそうではありません。口腔外科や歯科からみれば厄介な薬であっても、整形外科や外科・内科から見れば極めて重要な薬であることに変わりはなく、その恩恵を享受している患者さんも少なくありません。ちなみにこの薬剤を投与されている患者さんの全てに顎骨壊死が発症するわけではありません。発症頻度の高いのはBP系薬剤投与から約3年以上経過している患者さんです。しかし、3年未満でもステロイド剤を使用している方や糖尿病の合併、喫煙・飲酒習慣、口腔衛生状態不良の方に発症頻度が高いことが最近分かってきました。一方、新しい疾患のため未だ有効な治療法は発見されておらず、よって治療法が見つかるまでは予防を心がけることが大切になります。

BP系薬剤を使用している患者さんの為の予防の要点を以下に記します。
  1. 歯科医院受診の際はBP系薬を使用している旨を確実に伝える。
  2. 抜歯等の外科処置を極力避け、可能な限り保存的治療に終始する。
  3. 口腔を清潔な状態に保つ。
  4. 喫煙・飲酒習慣の改善。
以上の心がけをしても上述したように自然発生する人もいます。不幸にも発症してしまった場合には、腐骨部分の掻爬や、最悪の場合顎の切断が必要となることもあります。またBP系薬剤は骨そのものに沈着するため、顎骨壊死が起こったからといって薬を止めてもその改善効果はほとんどありません。一定期間薬を止めれば状態が改善する心疾患や脳梗塞の薬(血をサラサラにする薬)とはこの点で全く異なることをご理解下さい。
注意喚起の意味で、現在国内で使われているBP系薬剤名を列挙します。
【経口剤】
  1. フォサマック
  2. ボナロン
  3. ダンドロネル
  4. アクトネル
  5. ベネット
【注射剤】
  1. アレディア
  2. ゾメタ
  3. オンクラスト
  4. テイロック
  5. ビスフォナール
上記薬剤を使用中の方で、顎の骨が露出している、顎の慢性疼痛がある、歯肉から排濃がある、抜歯した所が治らない等の症状をお持ちの方は早急に口腔外科ないしは歯科に受診することをお勧めします。

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