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うみねこ通信 No.149 平成23年11月号

糖尿病網膜症について

眼科部長  木村 百子


糖尿病網膜症は、糖尿病腎症、神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、緑内障についで、わが国の失明原因の第2位となっています。

網膜は眼底にある薄い神経の膜で、物を見るために重要な役割をしています。網膜には光や色を感じる神経細胞が敷きつめられ、無数の細かい血管が張り巡らされています。血糖が高い状態が長く続くと、網膜の細かい血管は少しずつ損傷を受け、変形したりつまったりします。血管がつまると網膜の隅々まで酸素が行き渡らなくなり、網膜が酸欠状態に陥り、その結果として新しい血管(新生血管)を生やして酸素不足を補おうとします。新生血管はもろいために容易に出血を起こします。また、出血すると網膜にかさぶたのような膜(増殖組織)が張ってきてこれが原因で網膜剥離を起こすことがあります。糖尿病網膜症は、糖尿病になってから数年から10年以上経過して発症するといわれていますが、かなり進行するまで自覚症状がない場合が多く、まだ見えるから大丈夫という自己判断は危険です。糖尿病の方は自覚症状がなくても、定期的に眼科を受診するか、眼底検査のある健康診断など受けるようにしましょう。

糖尿病網膜症の分類

糖尿病網膜症は進行の程度により大きく3段階に分類されています。

1 ) 単純型糖尿病網膜症

初期の糖尿病網膜症で最初に出現する異常は、細い毛細血管の壁が盛り上がってできる血管瘤(毛細血管瘤)や、小さな出血(点状、斑状出血)です。たんぱく質や脂肪が血管から漏れ出して網膜にシミ(硬性白斑)を形成することもあります。これらは血糖値のコントロールが良くなれば改善することもあります。この時期には自覚症状はほとんどありません。詳しい網膜の状態を調べるため眼底の血管造影(蛍光眼底造影検査)を行うこともあります。

2 ) 前増殖糖尿病網膜症

単純網膜症が、進行した状態です。細い血管が広い範囲で閉塞すると、網膜に充分な酸素が行き渡らなくなり、足りなくなった酸素を供給する為に新しい血管(新生血管)を作り出す準備をはじめます。この時期になるとかすみなどの症状を自覚することが多いのですが、全く自覚症状のないこともあります。前増殖網膜症では多くの場合、網膜光凝固を行なう必要があります。

3 ) 増殖糖尿病網膜症

進行した糖尿病網膜症で重症な段階です。新生血管が網膜や硝子体に向かって伸びてきます。新生血管の壁が破れると、硝子体に出血することがあります。硝子体は眼球の中の大部分を占める透明な組織です。ここに出血が起ると、視野に黒い影やゴミのようなものが見える飛蚊症という症状がでたり、出血量が多いと急激な視力低下を自覚したりします。また、増殖組織といわれる繊維性の膜が出現し、これが網膜を引っ張って網膜剥離を起こすことがあります。この段階の治療には手術が必要な場合が多くなりますが、手術がうまくいっても視力の回復が得られないことが多くあります。この時期になると血糖のコントロールの状態にかかわらず(血糖値が良好でも)網膜症が進行する場合がありますので注意が必要です。

4 ) 糖尿病黄斑症

黄斑は網膜の中心にあり、良好な視力を得るために必要な視細胞が集まっている最も重要な部分です。黄斑付近に毛細血管瘤などが多発したり血液成分が染み出たりして黄斑に浮腫の生じた状態を糖尿病性黄斑症といいます。単純網膜症の段階でも、黄斑症が起きると視力がかなり低下します。

糖尿病網膜症の治療

1 ) 網膜光凝固術

レーザー光を用いて、主に毛細血管が閉塞した部分を凝固し酸素不足を解消して新生血管の発生を予防したり、すでに発生した新生血管を減らしたりして増殖糖尿病網膜症への進行を防ぐ、あるいは、増殖糖尿病網膜症から、硝子体出血や網膜剥離などの合併症が発生することを抑える目的で施行します。この治療は失明へと悪化することを防ぐ治療であり、以前の良好な視力を回復する治療ではありません。

2 ) 硝子体手術

レーザー治療で網膜症の進行を防止できなかった場合や、すでに網膜症が進行して網膜剥離や硝子体出血が起きている場合に行なわれる手術治療です。眼球の中に手術器具を挿入して出血を取り除いたり、増殖膜を剥がして除去したりします。入院して手術室での治療が必要となり、必ず手術前よりも良好な視力が得られるわけではありません。

糖尿病と診断されたら、真面目に血糖コントロールを継続することと、自覚症状がなくても、年に一度は眼底検査を受けるようにお勧めします。

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