閉じる
HOME
診療科のご案内
当院のご紹介
ご来院の皆様
採用情報
診療科・各部門
各種ご案内


HOME ≫ 各種ご案内 ≫ 広報誌のご案内 ≫ うみねこ通信 ≫ バックナンバー ≫  平成23年9月号

うみねこ通信 No.147 平成23年9月号

心房細動について

循環器・呼吸器内科部長  長谷川 一志


心房細動とは
 心房が細かくけいれんするように動き(細動)、脈がバラバラになる不整脈です。加齢により増加する傾向のある病気で、40代では1%程度ですが、70代では5~10%に上昇するので、今後の日本の高齢化社会ではますます増えると考えられています。多くの患者さんが何らかの治療を必要としますが、気付かれずに放置されたり、健康診断の心電図検査で疑いを指摘されても、自覚症状がない場合そのままにしている人も多いのが現状です。心房細動には①発作性心房細動:1週間以内に自然に発作が治まる。②持続性心房細動:1週間以上続くが治療すると治まる。③永続性心房細動:1年以上続いて、治療をしても治まらない状態の3つの種類があります。

原 因
 一般的に65歳以上に多く発症するといわれています。特に血圧が高い方が多く、他には甲状腺機能が高い方や糖尿病、もともと心臓に心不全、心筋症、弁膜症といった病気がある方は発症頻度が高くなります。ただし、心房細動を発症する患者さんは心臓にそのような基礎心疾患がない方の方が多く、原因がはっきりしないことも多いです。睡眠不足、過度なストレス、過食や塩分の取りすぎ、飲みすぎ、運動不足などの不健全な生活習慣も原因として注目されています。

症 状
 「なんとなく脈がおかしいと思う」、「胸のあたりに違和感がある」といった症状から、「胸が非常に苦しい、立っていられない」といった症状までさまざまです。また、まったく症状がない方もいます。一般的には、発作性心房細動では、心房細動が出たときの症状が強いのですが、永続性心房細動では、症状が少ないと言えます。

検 査
 正確な診断には心電図が必要になります。また、基礎疾患の有無や心機能を把握するために、甲状腺機能を含めた血液生化学検査、心エコー検査、胸部X線検査も必要です。発作性心房細動の診断や心拍数をみるためにはホルター心電図が有効です。

治 療
 心房細動の治療は、①発作を治し、再発しないようにすること(リズムコントロール) ②心房細動であっても心拍数を正常に維持すること(レートコントロール) ③脳梗塞を予防することです。発作性心房細動の場合は、早めに発作を治し慢性化させないために、薬や直流通電によるリズムコントロールが行われます。また発作を繰り返す患者さんで薬物治療がなかなか効かない場合に、カテーテルアブレーションという高周波で不整脈の原因となる部分を焼き切る治療が行われることもあります。一方、永続性心房細動の場合は、心房細動を正常のリズムに戻すことは困難なためレートコントロールのための薬物療法が主な治療です。発作性心房細動でも永続性心房細動でも同等に脳梗塞が起こりやすいことが報告されており、脳梗塞予防のための抗凝固療法が必要となります。どんな人がこの治療をする必要があるのか、その基準を決めるために「CHADS2スコア」というものが提唱されてきました。心不全(Congestive heart failure)、高血圧症(Hypertension)、年齢75歳以上(Age)、糖尿病(Diabetes Mellitus)がそれぞれ1点、脳梗塞、脳虚血発作の既往(Stroke)が2点で、2点以上になる人は積極的に抗凝固療法を受けた方がよいとされています。(しかし、この基準のみでも不十分で、1点でも治療を受けるべきだという考えもあります。)抗凝固療法としてワーファリンというお薬か、もしくは最近発売されたダビガトランというお薬が使用されます。

最後に
 動悸や胸部の違和感などの症状が強い場合には、医療機関を受診すべきです。一方、症状はほとんどなく、脈の乱れだけが気になる場合がありますが、心房細動であれば将来起こりやすい脳梗塞の予防が必要になるため、近くの医療機関を受診して正確な不整脈の診断をしてもらうことが必要です。

このページの先頭へ