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うみねこ通信 No.162 平成24年12月号

抗凝固療法について

心臓血管外科部長 小野 裕逸

心筋梗塞・心房細動などの心疾患、脳梗塞、心臓手術後や下肢血行再建術後などに血栓塞栓症の治療・予防を目的として使用される薬剤に、ワーファリン(一般名 ワルファリンカリウム)があります。使用に際して、担当医から案内があったり、病棟スタッフからパンフレットなどで指導を受けたりされていると思われます。
 服用に際し、いくつかの注意点がありますので、あらためて紹介します。

他の薬剤と違って、一日一錠などの一定容量で服用するものではない。
 この薬剤の特殊な点として、毎日一定量を漫然と服用してよい薬剤ではありません。血液検査でお薬の効果を判定し、それに合わせて投与量を増減する必要があります。以前は、トロンボテストというものを測定していましたが、現在ではPT-INRというものに変わってきております。一般にINR2.0前後で薬剤投与量を調整します。海外ではINR3.0前後に調整などとする清書もありますが、日本人の場合は比較的低めでもよいようです。また、この値は個人差や体調等による影響も大きく、一日1mgでよい場合もあれば、10数mg必要な場合まで様々です。お薬が増えるとがっかりしたり、減ると喜んだりされるのは医師として理解できる心情ですが、この薬に関しては一喜一憂する必要はありません。むしろ投与量は頻繁に変更されるものと理解してください。

食事制限をともなう。
食べてはいけないものがあります。代表的なものに納豆があります。血液が凝固するのには何種類もの凝固因子というたんぱく質の働きによります。この凝固因子の多くは肝臓で作られますが、そのうちいくつかのものはビタミンKの助けを必要とします。ワーファリンは、このビタミンKの働きを弱めることにより、そうしたたんぱく質の合成を阻害して、最終的に血液凝固を抑制します。納豆の中の納豆菌が腸管内でビタミンKを豊富に産生することから、納豆を食べると本薬剤の効果が薄れ血栓形成を予防できなくなるため、納豆を禁じています。
 納豆菌が問題なので、他の豆料理は差し支えありません。
 その他に、健康食品やサプリメントに含まれているクロレラも禁止しています。本やインターネットでは、青もの野菜(ほうれん草などの菜っ葉類)、ヨーグルト、きのこなどを禁じているものもありますが、これらはよほど大量に摂取しない限りは大丈夫と言えます。青汁はケール等を相当量濃縮していますので、これを常用するのは避けていただいています。
 まとめますと、納豆、クロレラ、青汁、この3種は摂取を制限されます。

食事以外では制限はないのでしょうか?
 ワーファリンは他の薬剤との併用により作用を増強・減弱する性質があります。
 代表的なものとして、抗生物質や一部の骨粗しょう症のお薬などがあります。抗生物質使用によりINRの値が高くなり(ワーファリンが効きすぎてしまう)、骨粗しょう症のお薬によりINRの値が引くなります(ワーファリンが効かない)。各科の医師に相談しましょう。

本薬剤による重大な合併症は?
 血液凝固を防ぎ、心臓内での血栓形成や血管の閉塞を防ぐためのお薬であるために、この薬剤が効きすぎてしまった場合、出血性合併症の危険があります。鼻血、球結膜(白目)の出血、皮膚の出血斑(青あざ)は比較的よく認められます。それ自体は心配なものではありません。稀に、消化管出血や血尿、脳出血などの重篤な出血症状を生じることもあります。このような内臓での出血は、強い貧血を生じたり、命にも関わりかねない事態です。定期的な血液検査で適切な服用量を判断してもらう、おかしいなと思ったら早めに当該科を受診して相談することが望ましいのはもちろんです。


最近では、ワーファリンとは異なる作用機序をもつ、新たな抗凝固剤も使用されるようになりましたので、治療の選択肢が増えたとも言えます。担当医とよく相談の上、判断されればよいと考えます。

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