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うみねこ通信 No.174 平成25年12月号

術中迅速病理診断について

検査科部長 山岸 晋一朗

術中迅速病理診断とは

術中迅速病理診断というのは、手術中の限られた時間内に、病変が腫瘍なのか腫瘍ではないのか、腫瘍とすれば、それが良性か悪性か、などを調べたり、癌の転移や病変の取り残しがないかなどについて、病理組織学的に調べることです。

通常の病理組織検査との違い

通常の病理組織検査は、採取された組織をホルマリンで固定し(1~2日)、パラフィン包埋ブロックをつくり(1日)、このブロックから薄い切片を切って、きれいに染色を施した組織標本プレパラートを作製し、顕微鏡で観察します。小さな生検組織では、固定が早く済むので、病理組織検査の結果を検体標本が採取された日の翌日に出せることも有りますが、通常は、結果が出るまで2、3日かかります。大きな切除標本の場合は固定に時間が必要なので、1週間以上かかってしまうこともあります。

これに対し、迅速診断の場合は、調べたい検体を液体窒素で急速に冷凍し、凍ったまま組織を薄く切ることの出来る器械(クライオスタット)で切片をつくり、さくっと染色を施して検鏡します。手術室から検体が病理検査室に届いて、術者に結果を報告するまで、だいたい10~15分ぐらいですから、通常の病理検査とは比較にならない短さです。しかしながら、早さと引き換えに、どうしても迅速標本の質は低いので、病理診断は難しくなります。例えると、水中メガネを使わないで水中のものを見るような感じでしょうか。こうした難しい標本でも診断を行うのが病理医の存在意義の一つですが、迅速診断ではどうしても判断がつかない時もあります。間違った診断をして、取らなくてもいいものを取ってしまったり、取らねばならないものを残したりしてしまったりするわけにはいきませんので、判断に困った場合は診断を保留して、後日、通常の病理組織標本で判定する場合もあります。

術中迅速病理診断の具体例 ―乳癌―

手術前に病変が良性か悪性か確定していない場合、手術中に病変から迅速標本を作製して、診断します。術中迅速病理診断の結果、病変が良性ならば、腫瘍のみを摘出して終わり、悪性(癌)ならば、広い範囲での摘出となります。

癌の場合、再発を防止する意味では大きく取るほうがいいのですが、できるだけ乳房を残したり、また、乳房の変形が少なくなるようにするためには、摘出する部分を少なくする必要があります。必要最低限の摘出で済ませるため、取り残しがないか調べる目的で、術中迅速病理診断が行われています。断端に腫瘍の広がりが認められた場合、少しずつ追加して切除していきます。切除範囲を小さく済ませるためには必須の検査です。

腋窩(えきか)リンパ節の郭清(かくせい)をすると、手が挙げられないなどの術後の後遺症が問題となることがあり、癌が小さい場合には、腋窩リンパ節郭清を省略できるかどうかの判定にも、術中迅速病理診断が行われています。癌に近い、最初の転移が生じるリンパ節(センチネルリンパ節といいます、センチネルとは見張り番のことです)を標本にして、ここに転移がなければ、腋窩リンパ節郭清を省略します。

最後に

乳癌の例を挙げましたが、その他の臓器でも乳癌の場合と同じように、良悪性の診断、切除断端の検索、転移の有無の確認などを目的として、術中迅速病理診断が行われています。標本のグレードが悪いという欠点がありますが、非常に有益な情報が得られる検査です。

 

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