閉じる
HOME
診療科のご案内
当院のご紹介
ご来院の皆様
採用情報
診療科・各部門
各種ご案内


HOME ≫ 各種ご案内 ≫ 広報誌のご案内 ≫ うみねこ通信 ≫ バックナンバー ≫  平成26年11月号

うみねこ通信 No.185 平成26年11月号

慢性期抗血栓療法

神経内科部長 栗原 愛一郎

脳梗塞は血栓、すなわち血の固まりができ血管が詰まるため血流が障害され脳組織の一部が死んでしまう病気です。発症1ケ月以降の慢性期も治療を継続しないと再発しやすく予防の目的で抗血栓薬をのんでもらいます。文字通り血の固まりを出来にくくし、巷に言う「血液をサラサラ」にするお薬で、抗血小板剤薬と抗凝固薬があります。脳梗塞は特殊なタイプを除くと心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞の3つに分けられます。心原性脳塞栓症の多くは心房細動が原因で、心房の一部が細かく痙攣し血流が鬱滞するため凝固因子という血を固まらせる成分が次々と活性化され血栓ができ、血流にのって脳に運ばれ動脈が完全に詰まり脳梗塞を生じます。この場合は凝固因子に作用する抗凝固薬を使うことになります。これに対しアテローム血栓性脳梗塞では首や頭蓋内の比較的太い動脈の血管壁にアテロームと呼ばれる脂肪の固まりができ動脈が細くなり血流が乱れたり動脈の内腔に接する内膜が損傷され、その部位に血球成分の一つである血小板がくっつくことが引き金となり血栓ができ脳梗塞を生じるので抗血小板薬が使用されます。ラクナ梗塞は脳の深い所にある細い動脈が高血圧症などのため損傷されてできますが、アテローム血栓性脳梗塞ほど血小板は関与せず、同時に小さな出血を認めることも有り血圧を十分コントロールしながら抗血小板薬を使います。どちらも効きすぎによる出血に注意が必要で出血のリスクの高い内視鏡手技や外科手術の際には休薬し、また抗血小板薬同士の併用、抗血小板薬と抗凝固薬の併用が必要な場合もできるだけ短期間としそれぞれ抗血小板薬、抗凝固薬単剤での使用が薦められています。

抗血小板薬:日本では4種類使用され、一つ目は解熱鎮痛剤として有名なアスピリンで、少量の剤型のものが使われ、副作用に胃潰瘍などの胃腸障害が有り胃酸抑制薬が一緒に投与されます。チクロピジンは二番目に古い薬ですが、使い始めに肝障害、血液障害が出現する事があり現在は殆ど使われていません。この薬の副作用を減らしたものがクロピドグレルで、作用も強く糖尿病、心筋梗塞、四肢の血管閉塞がある場合には好んで用います。シロスタゾールは日本で開発されたもので副作用として頭痛、動悸を認めることがありますが脳出血の副作用が少ないのが特徴です。

抗凝固薬:従来使われているワルファリンという薬と特定の凝固因子に直接作用する新規経口抗凝固薬と呼ばれるものがあります。ワルファリンは使われて半世紀になる古くから有る薬で、ビタミンKに作用して凝固因子の合成を阻害し効果を生じるため、ビタミンKが多く含まれる納豆、青汁、クロレラ食品を食べると薬が効かなくなりこれらの摂取は禁止されています。また個人により投与量にばらつきがある事や出血を防ぐため、血液検査で薬の効果を確認する必要があります。更に抗生物質や消炎鎮痛剤の併用で効きすぎる場合や逆に薬によってワルファリンが効きにくくなる場合もあり薬の飲み合わせに注意が必要なお薬です。新規抗凝固薬はここ数年次々と発売されて現在3種類ありますが、副作用としての脳出血がワルファリンよりも少なく、血液検査も不要で食事制限もないため今後ワルファリンに変わって使われていくものと思われます。ただ値段が高い事、ワルファリンと比べ薬の効く時間が短く飲み忘れると血中濃度が低下し脳梗塞が再発する可能性が有る事、低体重の方や、75歳以上の高齢者、腎機能障害がある場合には内服に制限があり、医者の側でも用法容量、適応を厳格に守って処方する必要が有ります。もちろんワルファリンで既にコントロールされている方は変更する必要は有りません。

以上お薬についてお話ししましたが、合併する高血圧、糖尿病、高脂血症の治療は言うまでもなく、喫煙、飲酒、食事、運動などの生活習慣の改善も慢性期治療のもう一つの重要な柱であり、抗血栓薬を含めかかりつけ医での治療を継続することが肝要になります。


-パーキンソン病の核医学検査について-

中央放射線部 伊 原   靖

最近、何もしていないのに手や足が震えることはありませんか?それは、もしかするとパーキンソン病の症状かもしれません。パーキンソン病は手足がふるえたり(振戦)、体の動きが遅くなったり(寡動)、筋肉がこわばったり(固縮)、体のバランスが悪くなったり(姿勢反射障害)することが特徴の病気です。これは、脳の神経が情報をやりとりする際に、神経と神経の間で受け渡しされる脳内ホルモン(ドパミン)が何らかの原因により不足して起こるとされています。今回は、パーキンソン病検査の中の一つ、核医学検査についてご紹介します。

パーキンソン病の核医学検査では、心臓の交感神経(体を活発に活動させる時に働く神経)を画像化する、心筋交感神経シンチがこれまで主に行われてきました。正常では心臓が丸く描出されます(図1左)。これは心臓の壁に交感神経が存在していることをあらわします。しかし、パーキンソン病患者さんの心臓の交感神経は通常より減少しているため、心臓はあまり描出されません(図1右)。

2014年1月からは新しい検査として、アメリカ・ヨーロッパではすでに標準的診断法となっている脳線条体シンチが日本国内でできるようになりました。以下に詳しくご紹介します。

脳線条体シンチは、冒頭でお示しした脳内ホルモン(ドパミン)の調節に関わるDATという特殊なタンパク質を画像化します。DATは脳の線条体という部分に多く存在するため、正常では線条体全体がほぼ均一に描出され、脳の断面像では「ハ」の字状に描かれます(図2左)。パーキンソン病の場合には線条体のDATが正常と比較し少なくなるため、描出が正常と違ったものになります(図2右)。
従来の検査と比べると、ドパミンの調節に関する脳の状態を直接見ることができるため、パーキンソン病の早期診断が可能になるとされています。

以上、パーキンソン病の核医学検査について紹介させていただきました。検査の詳細につきましては、当院放射線科にお気軽にお問い合わせください。

最後に、パーキンソン病は正しく診断し治療をすれば、きちんと普通に仕事をしている人も多いそうですので、症状に心当たりのある方は受診を考えてみてはいかがでしょうか?

 

このページの先頭へ