閉じる
HOME
診療科のご案内
当院のご紹介
ご来院の皆様
採用情報
診療科・各部門
各種ご案内


HOME ≫ 各種ご案内 ≫ 広報誌のご案内 ≫ うみねこ通信 ≫ バックナンバー ≫  平成26年4月号

うみねこ通信 No.178 平成26年4月号

塩と高血圧とアルドステロン症

糖尿病・内分泌内科部長 崎原 哲

高血圧は、成人日本人の約半数が患っている病気です。当たり前すぎて軽く見られがちですが、放置すれば動脈硬化をおこし、更には脳卒中や心筋梗塞など生命予後に関わる深刻な病気に繋がります。血圧のコントロールはとても重要で、「日本人の平均血圧を2mmHg低下させれば、2万人の命を救うことができる」と言われています。重い合併症を生じる前にしっかりと治療することが大事です。

以前から、塩分の摂り過ぎは高血圧の原因と言われており、日本高血圧学会が患者さんに勧める塩分摂取量は6g/日以下です。ちなみに世界保健機構(WHO)では5g/日だそうです。青森県民の平均塩分摂取量は11~12g/日程度ですので、半分に減らすことが求められます。高血圧の患者さんは、まず漬物や味噌汁を控えるなど、食習慣から是正しましょう。

このように、「塩」は近年、すっかり悪者扱いですが、本来は動物が生きていくためには必要不可欠な物質です。塩がないと身体の中の細胞は十分に機能できません。数億年前、生物が進化の過程で海から陸へ上がった時、身体の中に十分な塩分を溜めておけるような仕組みを獲得しました。それはアルドステロンというホルモンです。アルドステロンを持った動物は、わずかな塩分摂取でも陸上で生き延びることが出来るようになりました。

しかし、塩分豊富な食べ物が巷にあふれる現代社会では、このアルドステロンが逆に我々の健康を脅かします。高血圧患者の10人に一人は、このアルドステロンの過剰が原因だったことが判ってきました。過剰なアルドステロンは体内の塩分を増やし、高血圧を来します。この状態は『原発性アルドステロン症』と言う名前の付けられた病気です。この病気は、しばしば降圧剤が効きにくく、若年性で、重篤な高血圧を起こします。適切な治療が施されなければ、働き盛りのうちに脳卒中など深刻な病気に繋がる危険があります。若年で薬が効きにくい高血圧の場合は、この病気を考慮して精密検査をし、治療に取り掛かるべきです。

原発性アルドステロン症の原因は副腎という臓器にできる腫瘍や過形成です。疑った場合は、まず種々のホルモン検査を行い、アルドステロンの分泌異常を確認します。副腎は左右に二つある臓器なので、どちらの副腎に異常があるのかを、次に調べます。副腎静脈サンプリングと呼ばれる検査で、お腹の中の血管にカテーテルという管を挿入し、副腎のすぐ近くから採血し、腫瘍(あるいは過形成)の側を診断します。病気の場所がはっきりわかれば、これを手術で摘出するのが最良の治療法です。手術により、難治性高血圧が劇的に改善する例があります。

高血圧は軽いものから深刻なものまで様々です。また病気の原因・状態によって治療法も様々です。是非きちんと検査し、将来を見据え適切な治療を受けましょう。

 

このページの先頭へ