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うみねこ通信 No.187 平成27年1月号

下肢静脈瘤

第2心臓血管外科部長 棟方 護

大腿部や下腿部にコブ状に血管が膨らんでいる状態が下肢静脈瘤です。瘤とはコブのことであり、血管でいえば動脈瘤と静脈瘤があります。動脈瘤は大きくなると破裂する恐れがあり、破裂すれば死に至る可能性もあり、治療を急がなければならない場合があります。これに対して、下肢静脈瘤は通常、命にかかわる可能性はなく、良性疾患といえます。程度の軽いものであれば、放置しておいてもよいともいえます。

どうして下肢静脈瘤はできるのでしょう?

血管は動脈と静脈の2種類がありますが、動脈を流れるのは心臓というポンプから送りだされた血液であるのに対し、静脈は心臓に還っていく血液が流れます。つまり、下肢静脈内の血液は地球の重力に逆らってでも、血液が上に昇っていく必要があります。このためにいくつかの作用が関係しますが、そのうち足を動かす時にふくらはぎの筋肉の収縮により、上方に静脈の血液が押し出されるポンプのような作用が重要となります。また、静脈内には弁がいくつもあり、血液が逆流せず、一方通行となって心臓へと向かって流れるしくみにもなっています。しかし、加齢など様々な要因でこの弁が壊れていけば、下肢静脈内に逆流が生じます。立ったままの状態で足踏みをしない状態でも下肢のポンプ作用が機能できず、いつもより静脈内の圧力(静脈圧)が上昇します。この静脈の逆流や静脈圧の上昇が続くと時間経過とともに、静脈が延長し蛇行したり、膨らんだりしてくるのです。程度の差こそあれ、日本人の約10人に1人に静脈瘤があるといわれ、静脈圧の高くなる傾向にある、出産を経験した女性や立ちっぱなしの仕事をしている人に多くみられます。

治療が必要となるのはどんな時?

基本的に、症状がみられるときに治療が必要となります。症状とは、下肢のむくみ・だるさ・重苦しさなどが特に夕方にひどくなる、ふくらはぎがつる、また、静脈の炎症をおこすなど痛みのでる方もいます。皮膚炎をおこすと皮膚の赤み・かゆみ・黒ずみなどもみられ、皮膚潰瘍を形成し、非常に治りにくくなる場合もあります。

どういう治療法があるのでしょう?

代表的なものをいくつか挙げてみます。

1.弾性ストッキング着用

医療用のストッキングで下腿または下肢全体を圧迫することにより、むくみや重苦しさを軽減させる効果があります。日中に主に行い、夜間は外します。下肢に合わせてサイズを決定します。欠点として、圧力が強いため着用に骨が折れる、夏場は暑く不快を感じるかもしれません。

2.手  術

一次性静脈瘤(ほかの原因から逆流が起こるのではなく、静脈自体の逆流が原因で起こるもの)の中で、症状が出現するタイプでは、大腿から下腿にかけて内側を縦走する大伏在静脈や、ふくらはぎの後面を縦に降りる小伏在静脈の逆流が多くの人にみられます。このタイプには伏在静脈自体を抜去してしまう手術(ストリッピングといいます)が有効です。上記症状の全てに効果があるといえ、皮膚潰瘍も早期に治癒する方もいます。このほかに、伏在静脈を根元でしばってしまう高位結紮術も効果があります。

3.硬化療法

比較的小さい静脈瘤や伏在静脈の分かれた枝などに薬剤を注入して固めてしまう方法です。簡便な方法で、小さいものであれば、かなり目立たなくなることもあります。

4.血管内治療

伏在静脈を血管の内側から焼いて閉塞させてしまう治療法で焼灼術ともいい、ストリッピング手術と同等の効果があります。レーザー照射と高周波による2種類の焼灼術があり、血管を刺して棒状の管を入れて焼灼していきます。手術のような傷ができない、体に負担が少ないなどの利点がありますが、静脈の蛇行が強い例ではできません。現在、普及しつつある新しい治療法です。

治療法は医療機関により異なるので、それぞれの施設に相談してみるとよいでしょう。

 

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