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うみねこ通信 No.203 平成28年5月号

成人鼠径ヘルニアについて

第二外科部長 兒玉 博之

今回は、成人の鼠径(そけい)ヘルニアについて説明します。「鼠径ヘルニア」という病名には聞き覚えがなくても、「脱腸(だっちょう)」といえば知っている方も多いでしょう。

鼠径ヘルニア(脱腸)といえば、幼小児に起こる「小児鼠径ヘルニア」を思い浮かべる方も多いと思いますが、こちらは成因と治療法が異なるため、今回は割愛します。

鼠径ヘルニアとは、内臓が正しい位置から弱いところを通ってはみ出して、足の付け根付近(鼠径部)や陰嚢(いんのう)に柔らかい膨らみがおきる病気です。ヘルニアとは、「滑るようにして飛び出す、はみ出す」という意味です。鼠径部ではみ出す病気なので、鼠径ヘルニアといいます。はみ出てくる内臓は様々ですが、腸管が出てくることが多いので、一般的には「脱腸」と呼ばれています。

鼠径ヘルニアになると、鼠径部や陰嚢に膨らみが出てきます。その膨らみは、手で押さえたり体を仰向けにして寝ると引っ込んでしまうことが多いのですが、「痛みや違和感」を感じるようになったり、「お腹のつっぱり」や、「長時間の立ち仕事が辛い」、「急におなかが痛くなることがある」などの症状が出たりもします。

さらに、重篤な症状としては、はみ出た内臓がはまり込んでしまい、押しても引っ込まなくなり痛みも伴うようになることがあります。これを嵌頓(かんとん)といいます。この場合、腸管の血液の流れが悪くなって壊死したり、腸閉塞になったり、腹膜炎となることもあります。腹膜炎になった場合には、処置が遅れると命に関わることもあります。

それだけに、手で押して出っ張りが戻る段階で受診し、手術を受けるのが望ましいのですが、万が一、はみ出した腸を押しても簡単には戻らなくなった場合には、緊急の受診と処置が必要です。

鼠径ヘルニアは、弱くなった腹壁を押すように、内臓が飛び出てくる病気であり、薬や筋肉を鍛えることでは治すことができず、基本的には手術が必要です。飛び出た部分を外側から押さえる方法としてヘルニアバンドやサポーターなどでもありますが、根治目的のものではなく、かえって機械的刺激で癒着などを起こしたりするため推奨されません。

手術にはいくつかの方法がありますが、現在主流となっているのは、弱くなって隙間ができたところに、人工のメッシュシートやプラグといった補強材料を入れて、ゆるんだ隙間を補強し、内臓が本来の場所から飛び出てこないようにする方法です。麻酔の方法や補強材料であるメッシュの種類は、施設によって、またヘルニアの状態によっても異なりますので、医師から事前に良く話を聞くと良いでしょう。

 

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