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うみねこ通信 No.225 平成30年3月号

『血管の老化と内皮機能』

糖尿病・内分泌内科部長 崎原 哲

「人は血管とともに老いる。」 現代医学の発展に多大な貢献をしたウィリアムオスラー医師が遺した言葉です。平均寿命がまだ50歳程度だった100年以上前から、老化現象における血管の重要性を指摘していました。近年、老化と血管の関係は医学的に詳しく解明され、さらにテレビや雑誌で「血管年齢」と言う言葉も使われるようになり、多くの人が血管の老化を気にかける時代になりました。

ところで、血管が老いるとは、一体どういうことなのでしょうか?

医学的には「血管の老化」=「動脈硬化」です。動脈硬化とは文字通り、心臓から身体の末梢へ血液を送り届ける『動脈』が硬くなる状態です。誰でも30歳を過ぎた頃から、年齢と共に徐々に動脈が硬くなり始めます。ただその進み具合には個人差があり、その差が個々の老い方の違いにも繋がるようです。

動脈硬化の成り立ち

動脈の壁は外膜・中膜・内膜の3層から成っており、動脈硬化はまず内膜の障害から始まります。内膜を構成する血管内皮の働きが低下すると(図a)、血管が硬くなり(図b)、そこに血液中を流れるコレステロールが沈着し粥腫(アテローム)と呼ばれる隆起が形成されます(図c)。肥大した粥腫はやがて破綻し、血栓が形成され血管の内腔が著しく狭くなります(図d)。その結果血流が滞り、多くの組織に問題が発生します。例えば脳への血流が滞ると、脳血管性痴呆や脳梗塞を発症し、心臓への血流が滞ると、狭心症・心筋梗塞などを発症します。他にも動脈硬化の末に多くの血管病が発症し、生命の危険や生活の質の低下を招きます。

動脈硬化・血管病の治療

血管が詰まりかけているのであれば、これを拡げたり、バイパスを作ったり、人工の血管に置き換えたりする手術が必要になります。ただ、これらの治療は一部の血管閉塞を治し、狭心症や脳梗塞など切迫した状態を回避することは出来ますが、全身の血管病を治すことは出来ません。動脈硬化そのものを抑える、あるいは粥腫の形成を抑える内科的な治療が不可欠なのです。

前述の通り、動脈硬化は血管内皮の障害から始まります。つまり、血管内皮機能障害を防止できれば、動脈硬化の進行を抑えることが可能と考えられます。血管内皮は、加齢以外にも複雑な要因によって障害されます。現在解っている障害因子としては、少なくとも喫煙、運動不足、塩分の過剰摂取などの生活習慣、さらに高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病が挙げられます。またコレステロールが高値の方は粥腫が形成されやすく血流障害へと進行します。ですから、これらの因子を出来るだけ良い状態に保つことが、血管を若く保ち、更には全身の老化を予防することにつながるわけです。「生活習慣病を治療しましょう。」「肥満を解消しましょう。」「禁煙しましょう。」とよく言われているのは、つまり「血管内皮機能を守って動脈硬化を防ぎ、若さを保ちましょう」ということなのです。

血管内皮の評価法

「血管年齢」は今の動脈の状態を端的に表し、多くの血管病の発症を予見できる、とても便利な指標です。しかし、動脈硬化を未然に防ぐためには、血管内皮の状態についても知っておくべきかもしれません。血管内皮機能の評価には、『FMD』あるいは『RH-PAT(エンドパット)』と呼ばれる検査があり、最近、一部の病院ではこれを測定することができるようになりました。20分程度で済む比較的負担の少ない検査ですので、気になる方は、一度かかりつけの先生に聞いてみるのも良いかもしれません。

動脈硬化の進展
 

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