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うみねこ通信 No.226 平成30年4月号

『胃の機能と胃切除後症候群に関して』

第二外科部長 山田 芳嗣

胃は口から食道を通過した食物を蓄える袋のような臓器です。空腹時はしぼんでいますが、満腹時には膨張し飲食物を2Lも貯めることができます。胃の主な働きは次の3つです。

1)食物をとりあえず蓄える。
2)消化の第一段階を行う。

a)大量の胃酸を分泌する。主成分は粘液(胃壁を保護し、消化をスムーズにする)、塩酸(殺菌)、ペプシノーゲン(蛋臼分解酵素のもと)。
b)食物をこね回し、胃液を混ぜ合わせて、食物をどろどろの状態にする。

3)どろどろの食物を、ゆっくりと十二指腸へ送り出す。

では胃を切除するとどのような問題(胃切除後症候群)が起きるか述べます。

1.早期ダンピング症候群

胃が切除されると、糖分の高い食物が十二指腸あるいは小腸内へ急速に排出され、血糖値が急激に上昇し、特殊なホルモンが分泌されて起こる現象です。食後30分以内に出現する冷汗、動悸、眠気、脱力感、顔面紅潮や蒼白、下痢などの症状があります。対策として、1回の食事最を少なめに何回かに分けて、ゆっくり時間をかけて食べるようにします。

2.後期ダンピング症候群

胃の出口の幽門を切除すると、食物がそのまま小腸に流れ込みます。腸管からの糖質の吸収により急に血糖値が高くなると、血糖値を下げるホルモン(インスリン)が大量に分泌されて、逆に血糖が下がり過ぎることがあります。通常、食後 2-3時間ころにめまい、脱力感、発汗、震えなどが起きます。症状は低血糖で起こるため、糖分を補うことで改善できます。

3.逆流性食道炎

胃の入口(噴門)を切除すると、噴門の逆流防止機能が損なわれ、胃液や腸液、胆汁などが食道へ逆流し、胸やけなどの症状が出現します。対策として、脂肪分の多い食事を控え、食後すぐに横になるのは避けます。横になる場合は、上半身を少し高くします。夕食は就寝の2-4時間前にとるようにします。

4.貧血

胃切除後は、赤血球をつくるために必要なビタミンBl2の吸収が不良となります。鉄を吸収されやすい形に変える胃酸の分泌も減少します。そのため、ビタミンBl2の吸収障害と胃酸の減少の相乗効果により、貧血となります。対策として、鉄分の摂取を心がけます。定期的に血液検査を受け、必要に応じて鉄剤を内服したり、ビタミンBl2の注射を受けます。

5.貧血

胃の構造

胃の手術後は、カルシウムの吸収が不良となり、骨折しやすくなります。カルシウム剤やビタミンD製剤が必要となることがあります。バランスのよい食事と、骨を支える筋力を強化するための運動も大切です。
胃を切除しても通常は大きな問題はありません。しかし胃にはこれまで述べたように多くの働きがあり、長期的にみると種々の問題点があることを記憶にとめておく必要があると考えます。

 

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