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うみねこ通信 No.270 令和3年12月号

血便について

消化器内科医師 相馬 郷

皆さんは血便というと、どのような疾患を思い浮かべるでしょうか。血便を来す頻度が多い疾患として、大腸癌や虚血性大腸炎、大腸憩室出血などが挙げられます。今回は虚血性大腸炎と大腸憩室出血について説明します。

[虚血性大腸炎]
虚血性大腸炎は、大腸粘膜を栄養する血管が一時的に狭窄もしくは閉塞することによって、虚血(酸素などの栄養素が行き渡らなくなった状態)となった結果、大腸粘膜に炎症や潰瘍が出現して発症します。その結果、大腸粘膜がボロボロになって出血をすることで血便が見られるようになります。
本疾患の原因は多岐にわたっており、便秘や下剤の使用、浣腸等により腸管内部の圧力が上昇することによって腸管粘膜の血流が低下して発症すると言われています。その他には高血圧や糖尿病、心房細動などが危険因子となり得ると言われています。
症状としては突然の強い下腹部痛が出現した後に、下痢が出現していき徐々に血液交じりの下痢へと変わっていくのが典型的なパターンとなっており、診断には下部消化管内視鏡を用います。
虚血性大腸炎を発症した場合は、食事を中止して補液を行い、腸管を休ませるといった保存的な治療が基本的な方針となります。重症例の場合は輸血や抗生剤投与を行うことはありますが、手術などの体に大きく負担のかかる治療を行うことはあまり多くはありません。ある程度腹痛や血便が落ち着き、血液検査にて炎症反応の数値が改善して来れば水分摂取から始めていき、症状の悪化を認めなければ食事を開始していきます。

[大腸憩室出血]
大腸憩室は、大腸粘膜の一部が腸管内圧の上昇や加齢によって粘膜が弱くなった結果、袋状に大腸壁の外へ突出して生じます。基本的には無症状であることがほとんどなのですが、時折粘膜表面の血管が破れて出血し、大量の鮮血便が出現することがあります。これを大腸憩室出血と言います。特に腹痛などが出現することなく突然出血して、トイレに行った際に鮮血や凝血塊(血の塊)が出現することで気づかれることが多いです。
この疾患も下部消化管内視鏡検査で診断して行きます。その際に止血術を行うこともありますが、出血を起こしている憩室を確定できるのはおよそ3割以下とされています。そのため治療としては基本的に絶食と補液を行い、必要に応じて止血剤(血を止めやすくする薬)を投与するといった保存的治療となることがほとんどです。大腸憩室出血は保存的治療によっておよそ7割程度が自然に止血を得られるとされており、大体の方はそこで治療終了となります。しかし、自然に止血されない場合は輸血に加えて手術などの積極的な治療が必要となる場合もあります。また、およそ2割の方が1年以内に再出血を起こすと言われています。保存的治療で止血される方でも、あまりにも出血を繰り返す場合には手術を勧める場合もあります。

虚血性大腸炎と大腸憩室出血はどちらも血便を来す疾患ではありますが、基本的には保存的に治療可能なものがほとんどですので、急に血便が出現したからと言って焦ることなく、落ち着いて病院を受診するようにしてください。
 

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