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うみねこ通信 No.261 令和3年3月号

ポリファーマシー
- 高齢者の多すぎる薬 -

薬剤副部長 坂口 修治

【もしかしてポリファーマシー?】
「薬が多くて、ご飯の代わりになるくらいです。」患者さんから聞く言葉です。何種類もの薬を飲むだけで、お腹いっぱいになることを揶揄して、そのように言っているのだと思います。この言葉を聞くと、薬剤師は、「もしかしてポリファーマシー?」と考えます。最近注目されている言葉です。必要以上に薬を服用していませんか?厚生労働省はポリファーマシーの解消を推進すると発表しています。
【ポリファーマシーの概念】
ポリファーマシーは「Poly(多くの)」+「Pharmacy(調剤・薬)」。そのまま捉えれば多剤服用となりますが、多剤服用の中でも害をなすものを特にポリファーマシーと呼びます。何剤以上からポリファーマシーなのかは、明確な定義はありません。
患者さんは好んで多剤服用しているわけではないかもしれません。ただどうしても薬が多くなると副作用などの薬物有害事象が増えることも知られています。
【高齢者では薬の数が増えてきます】
高齢になると、複数の持病を持つ人が増えてきます。そして、病気の数だけ処方される薬も多くなります。70歳以上の高齢者では6つ以上の薬を使っていることも珍しくありません。
厚生労働省の調べでは、60歳を超えると7つ以上の薬を受け取る割合が増え、75歳以上では約4人に1人となるとされています。
【高齢者に多い薬の副作用】
高齢者は、多くの薬を使うと副作用が起こりやすいだけでなく、重症化しやすくなります。高齢者に起こりやすい副作用はふらつき・転倒、物忘れです。特にふらつき・転倒は薬を5つ以上使う高齢者の4割以上に起きているという報告もあります。また、高齢になると骨がもろくなるので、転倒による骨折をきっかけに寝たきりになったり、寝たきりが認知症を発症する原因となる可能性もあります。そのほかに、うつ、せん妄(頭が混乱して興奮したり、ボーっとしたりする症状)、食欲低下、便秘、排尿障害などが起こりやすくなります。
【高齢者に副作用が多くなる理由】
高齢者に薬の副作用が多くなる理由は、薬の種類が多い事だけではありません。加齢によって薬の効き方が変化することも影響しています。多くの薬は肝臓や腎臓で分解や排泄が行われます。しかし高齢者になると、肝臓や腎臓の機能が低下して、分解や排泄までの時間がかかるようになり、次の薬の時間になっても体の中に多くの薬が残っていることになり、薬が効き過ぎることになるのです。
【高齢者の薬との付き合い方】
厚生労働省ではポリファーマシー解消のため以下のように説明しています。
・自己判断で薬の使用を中断しない
「多すぎる薬は減らす」ことが大事ですが、「薬を使わなくていい」ということではありません。
・使っている薬は必ず伝えましょう
病気ごとに異なる医療機関にかかっている場合は、薬が重複したり増え過ぎないよう、医師や薬剤師に使っている薬を正確に伝えましょう。
・むやみに薬を欲しがらない
医療機関は病気や健康をみてもらうところで、薬をもらいに行くところではありません。
・若い頃と同じだと思わない
加齢とともに体の状態、薬の効き方が変化します。よって高齢者には高齢者に適した処方がされています。
・薬は優先順位を考えて最小限に
かかりつけの医師に薬の量と数についてよく相談してみましょう。
【かかりつけ薬局をもちましょう】
「ポリファーマシーの解消と言っても、なんだか難しそう」と思った方もいらっしゃると思います。そんな時は薬剤師に相談してみましょう。日本老年医学会は、薬剤師が介入したことで薬物有害事象が減少し、薬物療法の質が向上したとしています。
かかりつけ薬局をもち、自分の病気と薬をすべて把握してもらうとよいでしょう。もしかしたら、それがポリファーマシー解消の第一歩になるかもしれません。

<参 考> 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(日本老年医学会)
      高齢者の医薬品適正使用の指針-厚労省
 

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