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うみねこ通信 No.272 令和4年2月号

夜間多尿について

泌尿器科部長 伊藤 弘之

夜間排尿のために1回以上起きないといけない状態を夜間頻尿と言います。夜間頻尿の原因は、膀胱蓄尿障害(膀胱容量の減少)、多尿(尿量の増加)、睡眠障害などが挙げられます。これに関与する因子として、腎泌尿器疾患、睡眠障害、脳血管障害、高血圧、肥満など様々であり、夜間頻尿は多くの因子から引き起こされる症状と考えられています。今回は夜間頻尿の原因の一つである夜間多尿について説明します。
 夜間多尿は高齢者では30~50%に認められます。過度な飲水、尿崩症による多尿のほか、うっ血性心不全、末梢静脈還流不全、過剰な塩分摂取、低アルブミン血症などにより水分が昼間に体内に貯留(むくみのような状態)し、昼間に出るべき尿が夜間の尿となり夜間多尿となります。
 高齢者においては、夜間の抗利尿ホルモン(尿量を減らす働きのあるホルモン、夜間に分泌される)の分泌が低下し夜間多尿となります。また、腎機能低下があると、水分摂取後の速やかな尿排泄が低下することで、夜に持ち越されて夜間尿量増加が起こります。コントロール不良の糖尿病では、高血糖も多尿の原因となります。
 過剰な水分摂取も夜間多尿となります。心筋梗塞や脳梗塞の予防を目的とした水分摂取も目立ちます。健康をテーマにしたテレビ番組などの影響も大きく、医療従事者側からも水を多く飲むように勧めているケースもあります。確かに高齢者は喉の渇きに気付きにくいこともあり、脱水に対しては注意が必要です。しかし、必要以上に過剰な水分摂取が虚血性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)を予防するという科学的根拠は乏しく、過剰な水分摂取にならないように、適切な水分の摂取量やタイミングを調整する必要があります。
 夜間多尿を評価する方法として、排尿日誌を記載することが最も有効かつ簡便な方法です。排尿時間、排尿量、就寝時間、起床時間を24時間記録、これを3日間ほど行い評価します。また、カフェイン、塩分やアルコールの多量摂取などの誤った食習慣も原因となるため、飲水物の種類や量も排尿日誌に記載することも参考になります。1日尿量における夜間睡眠中の尿量の割合は、高齢者では33%以上、若年者では20%以上で夜間多尿とされます。
 一般的には24時間尿量が20~25ml╳体重(㎏)となる水分摂取が適当であると言われています。就寝前までに主に下肢に蓄積された余剰水分(むくみ)が夜間多尿の源になっているため、夜間のみではなく、起床後から就寝までの総水分摂取量を適正にすることが改善につながります。夕方に散歩などの軽い運動を行うことで、下肢に貯留した余剰水分を循環させ、汗または尿として体外に排出させる効果が期待できます。夜にゆっくり入浴することも同様な理由で効果が期待できます。規則正しい生活を心がけ、夕方に軽い運動を行い、水分の摂りすぎないように注意するだけで改善することが多く、夜間多尿があれば、まずは水分の取り方と生活習慣の見直しを行ってみましょう。
 

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