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日本では高齢化社会の進展によって認知症高齢者が増加しており、大きな社会問題になっています。
厚生労働省の推計によりますと、1995年に126万人だった認知症高齢者数が2020年には292万人、わずか25年で2.3倍に増加するといわれています。また、認知症の出現率を年代別に見てみますと加齢と共に増加し、85歳以上では4人に1人が認知症だと言われています。このように、認知症は私たちにとって身近な病気なのです。
認知症は加齢による「もの忘れ」との区別がつきにくい病気です。その方の「もの忘れ」が年齢相応の自然なものなのか、病的なものなのかをなるべく早く診断することが重要です。なぜなら、原因となる病気を適切に治療すれば「もの忘れ」が治ることがありますし、「もの忘れ」の症状を軽くすること、進行を遅らせることができる場合もあるからです。これらは早期診断、早期治療より高い効果が期待できるといわれています。
典型的なアルツハイマー型認知症と健康成人の脳の画像を比較しますと、右のようにアルツハイマー型認知症の脳のほうが明らかに「萎縮」しています。しかし、「早い段階からアルツハイマー型認知症を画像で見分けること」はこれまで非常に困難なことでした。
早期アルツハイマー型認知症では、脳の中の海馬(かいば)・海馬傍回(かいばぼうかい)と呼ばれている「記憶にかかわる重要な部位」が最も早く萎縮することが判明しています。従いまして、海馬・海馬傍回付近の萎縮がどの程度かを見極めることが早期アルツハイマー型認知症の画像診断で大事なことなのです。
しかし、この海馬・海馬傍回は小さな部位なので、これまではMRIで撮影した画像から早期診断することが難しかったのです。
最近VSRAD(ブイエスラッド)という画像解析ソフトが開発されました。このVSRADは「早期アルツハイマー型認知症の診断を支援するシステム」です。このソフトを使うことによって、当院で撮影した頭部MRI画像と健常者のMRI画像で海馬・海馬傍回の萎縮の程度を比較し、数値で示すことができるようになりました。
VSRADは、MRI検査においてこれまでは難しかった早期アルツハイマー型認知症の診断を補うものですが、この検査結果のみでアルツハイマー型認知症と診断することはできません。医師の診察などの臨床情報により、アルツハイマー型認知症が疑われた場合は頭部MRI検査の際にオプションとしてこの解析を行います。
2015年8月、VSRADをVSRAD advance2へバージョンアップしました。従来のVSRADでは関心領域(VOI : Volume of Interest)として内側側頭部(海馬・扁桃・嗅内野の大部分)のみでしたがVSRAD advance2では新たに背側脳幹を加えることによりVOI間萎縮比(背側脳幹/内側側頭部)という指標が追加になりました。これはアルツハイマー型認知症(AD)とレビー小体型認知症(DLB)の鑑別支援を目的として搭載された指標であり脳のMRI画像の情報から、内側側頭部を基準として背側脳幹がどれだけ萎縮しているかを確認することが出来ます。
尚、VSRAD advance2の解析結果を従来のVSRADの解析結果と比較することは画像解析システムの差異により出来ませんのでご了承ください。
検査をご希望の方は、当院の放射線科外来にご相談ください。
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