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産婦人科医師 坂本 亜希子
低用量ピル(以下ピル)とは避妊を目的として作られた薬です。日本では1999年になってピルを使用することができるようになったため新しい薬という認識がもたれているようですが、欧米諸国では1960年代から使用されており、世界中ではすでに9100万人もの女性がピルを内服しています。
ピルは経口避妊薬という名称から、一般的に「性活動が活発な女性が飲む薬」=「飲んでいると他人に言うのが恥ずかしい」と思われているようなところもあります。しかしながら、避妊目的以外に、例えば月経痛がひどいとか、月経不順があるなどの症状に効果があることから、避妊を必要としない女性も内服することもあります。今回は、ピルについてお話しします。
ピルは、避妊を目的とした「錠剤(飲み薬)」です。日本で一般的な避妊法として認識されているコンドームと違い、男性に頼ることなく女性の意志で確実に避妊できる(望まない妊娠を回避できる)薬です。ピルには、2種類の女性ホルモン剤(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)が含まれていて、これにより排卵が抑制されたり、受精卵が着床しにくくなったり、子宮へ精子が入りにくくなることで、妊娠を防ぎます。
また、服用を中止すると再び排卵が起こるようになるため、妊娠することができます。(不妊手術と違い、永久的な避妊方法ではありません。)
一般的に選択されている避妊方法(オギノ式、コンドームなど)では妊娠率が14~25%です。
これらに比べて、ピルの避妊効果は、理想的な服用をした場合(飲み忘れがない場合)の妊娠率が0.1%、飲み忘れを含めた一般的な服用方法で5%と言われており、確実な避妊ができます。(0.1%とは1000人の女性が1年間ピルを服用した時、1人が妊娠するということです。)
できません。
性感染症の予防方法は、コンドームにより行ってください。また、複数のパートナーとの関係を避け、特定のパートナーとの関係を保つことが大切です。
ピルは避妊以外にも、体に対する良い効果・生活の質を改善するような効果があり、これを副効用といいます。
以上のような効果があるため、実際、避妊を必要とするしないに関わらず、副効用を目的に内服している人もいます。
代表的な副作用としては、血栓症や悪心・嘔吐、頭痛、乳房緊満感などがありますが、「低用量」という名称からもわかるように、一般的な女性ホルモン剤に比べてホルモン含有量が少ないため副作用の発現頻度も少なく、長期間にわたっての服用が可能です。
副作用について心配な点がある場合は、産婦人科医と十分に相談したほうがよいでしょう。
以上の点に当てはまる方は、ピルを飲むことができない場合もあるため、医師とよく相談してください。また、その他に、一緒に飲むと飲みあわせが悪い薬(ピルの効果が弱くなる薬)などもありますので、他医院にかかっている、または他に内服している薬がある場合、医師に申し出た方がいいでしょう。
また、ピルを長期服用する場合は、副作用がないかを確認するために年に1回は子宮癌検診と採血検査を行ったほうがいいでしょう。
ピルは、上手に利用すると、大変良い薬です。興味がある方は、産婦人科で相談してください。ピルは、健康保険の使用が認められていない薬であるため、病院により料金が異なります。料金についても窓口で確認した方がよいでしょう。