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うみねこ通信 No.152 平成24年2月号

乳癌と自己検診について

第二外科部長  山田 芳嗣

本日は最近増加している乳がんとその自己検診法についてお話しいたします。
アメリカでは現在、全女性の8人にひとりが一生の間に乳がんになると言われていますが、日本では20人にひとりぐらいと言われています。10年前の日本の乳がん罹患率(乳がんになった人の数を女性の総人口で割り、10万をかけます)は10万人対で37人と先進国の中では最低です。しかし、最近の傾向は喜ばしいものではありません。アメリカやイギリスでは国を挙げて乳がん対策に取り組んでいて、その結果、罹患率はまだ高いのですが、両国の乳がん死亡率は1990年から下降に転じています。ところが日本では、死亡率・罹患率ともに右肩上がりが続いていて、現在は毎年約3万5千人が乳がんにかかり、亡くなる人も1万人に近づいています。今や乳がんは日本の女性が最もかかりやすいがんであり、30代に入ると子宮がんよりも乳がんの方が何倍も確率が高くなるのです。
 日本における乳がんの統計的な特徴は、30代後半から急激に増え始め、40代後半でピークに達し、高齢になると減っていくということでした。欧米では70歳、80歳になっても増え続けますが、日本ではその年齢になれば乳がんはもう関係ないといわれたものです。しかし、最近は日本でも高齢者の乳がんが増え、この点でも欧米化が指摘されているのです。
 このような乳がん増加の背景にあるのは、日本人のライフスタイルや食生活の欧米化だろうといわれています。乳がんは女性ホルモンと密接に関係があり、最近の非婚傾向や高齢出産などのライフスタイルの変化は、乳がんの統計にも影響を与えています。今後10~15年間、日本の乳がんは増え続け、2015年には乳がんにかかる人は年間5万人に到達するのではないかと予測されています。
 このように身近になった乳がんですが、早期発見・早期治療を行えば、90%以上の確率で治癒します。さらに言えば乳がんは、自分で発見することが可能な数少ないがんなのです。
 既に自己検診を励行している方も少なくないと思いますが、標準的な方法を述べます。まず、大きな鏡の前に立って、乳房をよく観察しましょう。チェックするのは、乳房の形、色、ひきつれ、くぼみ、左右の乳頭の位置などです。両腕を上げた状態、下げた状態の両方をチェックしましょう。腕を上げるとひきつれやくぼみが強調されて、わかりやすくなることがあります。
 次に、乳房に指をすべらせて、しこりを調べます。押したりつまんだりするより、お風呂で石鹸などをつけ、指先で小さな円を描くようにして、乳房をくまなくすべらせるほうがよくわかります。乳房が大きい人は、仰向けに寝て、乳房を平らにするとわかりやすいでしょう。乳がんは外側の上部にできやすいので、その部分を特に念入りにチェックするのもポイントです。最後に、わきの下にしこりがないかどうか、乳頭から異常な分泌物が出ていないかどうかもチェックしてください。
 こうした自己検診を1ヶ月に1回行うことをおすすめします。排卵時には乳房が張ってチェックしにくいので、月経後4日~1週間目がいいでしょう。閉経後の人は、毎月1日など、覚えやすい日を決めて、定期的に行ってください。自己検診をすすめるのは、単にしこりをチェックするためだけではありません。乳房は左右で違います。また、硬い人、やわらかい人、さまざまです。自分の乳房の普段の状態を覚えておくという意味でも、自己検診は大切なのです。
 乳がんや自己検診について不安や疑問のあるかたは、近くの外科や検診センターを受診されることをお勧めいたします。

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