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うみねこ通信 No.227 平成30年5月号

大腸がん

第四消化器内科部長 樋口 博之

大腸は食物が消化吸収された残りの腸内容物をため、水分を吸収して大便にする器官です。大腸菌や乳酸菌などの100種類以上の腸内細菌が存在しており、食物繊維の分解や感染予防の働きなどをしています。

大腸がんは大腸粘膜の細胞から発生し腺腫や鋸歯状ポリープという良性のポリープの一部ががん化して発生したものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。粘膜の表面から発生したあと、大腸の壁に次第に深く侵入していき、進行するにつれてリンパ節や肝臓、肺など別の臓器に転移します。

症  状

早期の段階では自覚症状はありませんが、多い症状としては、血便、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、腹痛、貧血、原因不明の体重減少などがあります。中でも出現の頻度が高い血便については、痔などの良性疾患でも同じような症状が起こるため、大腸がんの早期発見のためには早めに消化器科、胃腸科、肛門科などを受診することが大切です。時には、がんによる腸閉塞症状から嘔吐などでがんが発見されることや、大腸がんの転移が、肺や肝臓の腫瘤として先に発見されることもあります。

発生要因

大腸がんの発生要因として、生活習慣では飲酒や肥満・喫煙が、食生活では赤肉(牛・豚・羊の肉)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)の摂取増加が指摘されています。遺伝的な要因としては、直系の親族に家族性大腸腺腫症とリンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス性大腸がん家系)にかかった人がいるという家族歴が知られています。

大腸がんのリスクを下げる要因としては、運動による予防効果が確実とされています。特にデスクワークなどで運動不足になりがちな人は、日常の中で体を動かす習慣をつけましょう。また、食物繊維を含む食品の評価は変動がありましたが、近年確実な予防要因と位置づけられました。にんにく、牛乳、カルシウムはおそらく確実な予防要因です。

大腸がん検診

一般的な大腸がん検診に便潜血検査があります。便潜血検査は便に血液が含まれるかどうかを検査するもので、症状がない健康な人から、大腸がんの精密検査が必要な人を選び出すためには、最も有効で負担の少ない検査法です。一般に感度を上げるため便潜血検査は2回法(異なる日の排便を用いて2回検査する)で行われます。一度でも陽性の時は、二次検査を受けることが重要です。痔がある場合にも陽性になりますが、大腸がんやポリープが潜んでいる可能性もありますので、痔のせいだと決めつけず、ぜひ二次検査を受けましょう。

また、便潜血陰性は必ずしも大腸がんなしを意味するものではありません。便潜血2回法は大腸がんに対する感度(大腸がん患者さんのうち便潜血検査が陽性となる頻度)が良好な検査ではありますが、まれに大腸がんであっても便潜血検査陰性となってしまうこと(偽陰性)が起こりえます。上記の症状や発生要因に該当する方や大腸がんが心配な方は、便潜血検査が陰性であっても積極的に大腸内視鏡検査などの精密検査を受けることをお勧めいたします。年1回の便潜血検査を毎年継続して行うことも偽陰性を減らすために大切です。

大腸がんは近年著しく増加している疾患です。早期に発見して適切な治療を行うことにより、その死亡率を減らせることが期待できます。大腸がんの前病変であるポリープを発見し、がんになる前に摘除することも重要な予防になりますし、癌であっても早期の状態であれば内視鏡治療のみで治癒が可能です。

皆さんぜひ大腸がんの予防と早期発見に努めましょう。

 

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