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泌尿器科部長 伊藤 弘之
前立腺って何かご存知でしょうか?前立腺肥大症や前立腺がんなどの病気は非常に多い疾患で、耳にしたことはあると思います。しかし、前立腺がどういった臓器で、どういった働きをする臓器かはご存知でしょうか?
前立腺は男性にしかない臓器で、女性の子宮に相当する臓器です。膀胱の下にあって、前立腺の中を尿道が走っています。正常の大きさはくるみ大、正常の重さは15~20g程度です。
前立腺の働き①
精液の一部の前立腺液(前立腺特異抗原:PSA)を産生・分泌する臓器です。PSAの役割は、射精後の精液を液化し、精子を遊離することにより女性生殖器管内で遊走させることです。前立腺液がないと、自分の力で受精することができないのです。
PSAは通常、総排出量のわずか(0.1%未満)が血流に吸収されるのみで、血清値は4ng/ml※以下です。前立腺疾患では腺管構造が障害されるため、血流に吸収され、PSA値が通常値より高くなります。PSAは前立腺がんで高値になるため、前立腺がんの腫瘍マーカーとして使用されています。前立腺肥大症や前立腺炎でも高値を示すことがあります。
※ 1ngは1gの10億分の1、1mlは1ℓの千分の1
前立腺の働き②
射精をするために必要な臓器です。射精時は精液が膀胱へ逆流しないように膀胱頚部(膀胱からの出口)が硬く閉鎖し、前立腺内が「圧力室」になり、球海綿体筋の拍動性収縮し射精します。前立腺がないと射精することができません。
以上のように子供を作るために非常に重要な働きをする臓器なのです。
前立腺は年齢を重ねると必要とならなくなりますが、年齢を重ねるとともに前立腺肥大症や前立腺がんといった病気になりやすくなります。前立腺肥大症は50歳代で30%、60歳代で70%、70歳代で80%の方がなっていると言われています。おしっこの勢いが弱かったり、頻尿といった症状がみられます。
また前立腺がん罹患数は胃がん、肺がんに次いで日本人で3番目に多いがんです。前立腺がんも前立腺肥大症と同様に、50歳を過ぎた頃から急激に罹患率が上昇します。前立腺がんの症状は初期では前立腺肥大症と同じか、全く無症状のこともあります。
前立腺がんは血中のPSAを測定することによって前立腺がんの有無を簡便に推測することができます。ですので、おしっこの症状のない方でも50歳を過ぎたら、健康診断などでPSA値を測定してくれますので、検査をしてみてはいかがでしょうか。