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主任栄養士 川村 美穂
例えば、「糖の吸収をおだやかにする」「おなかの調子を整える」など商品のパッケージに書かれた言葉に誘われて、商品を購入したことのある方は少なくないと思います。実際に、健康診断等で指摘を受けた方で、医療機関にかかる前に保健機能食品やいわゆる健康食品を始められている方がよくいらっしゃいます。しかし、それらをしっかりと理解している方は少ないと思います。
そこで今回は、食品表示を賢く利用できるように、そもそもどういうものなのかをご紹介します。
まず区分ですが、私たちが口から飲んだり食べたりするもののほとんどが「食品」で、食品以外には医薬品や医薬部外品があります。1991年以降、一部の食品は機能性を表示できるようになり、これが「保健機能食品」です。
保健機能食品以外の食品は機能性が表示できないので、全て「一般食品」で、「効能・効果」があるかのように表示された、いわゆる「健康食品」は、あくまでも「一般食品」の扱いです(図1)。「体に良さそう」と期待して飲んだり食べたりする商品ではありますが、「健康食品」は医薬品ではないので「効能・効果」的な文言、すなわち「改善します」とか「治します」と表示できません。その代わりに「気になる方へ」「○○対策に!」のように、なんとなく良いのかな、と思ってしまうような表現で広告されています。これは、とても魅力的で、面倒くさいことをしなくもいいのではないかと期待して利用したくなるかもしれませんが、それだけで気になるものが改善される「健康食品」は残念ながらありません。
さて、保健機能食品には、図1に示すように3種類ありますが、制度ができた背景も定義に関する法律も異なります。「特定保健用食品(トクホ)」について国立健康・栄養研究所のホームページによると「特定の保健の目的が期待できることを表示した食品であり、身体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分(関与成分)を含んでいます。(中略)健康が気になる方を対象に設計された食品であり、病気の治療・治癒を目的に利用する食品ではないことに留意してください」とあります。トクホはヒトを対象に行った実験研究で一定の効果があったため許可されていますが、その効果があまりにも小さいことが消費者に伝えられていないことも事実ですので、多大な効果があると期待しすぎることは禁物です。体調管理の手助けと理解しましょう。
つぎに「栄養機能食品」ですが、栄養成分補給のために利用される食品で、その栄養成分の機能を表示するものをいいます。6種類のミネラル(亜鉛や鉄、カルシウムなど)、13種類のビタミン(ビタミンCやB群、葉酸など)、そしてn-3系脂肪酸を基準量の範囲で含んでいればその栄養機能を「定められた表現」で表示できます。ビタミンやミネラルは、多量に摂取しても効果が感じにくいものが多く、また、摂取上限値が決められているものもありますので、摂取する量は表示を参考に守りましょう。
そして、「機能性表示食品」は、利用対象者が「疾病に罹患(りかん)していない方」であり、未成年者、妊産婦(妊娠を計画している方を含む)、授乳婦は利用対象外です。これは、機能性表示食品が健康政策ではなく、経済活性化のために作られた制度だからです。消費者庁は「(中略)機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者がそうした商品の正しい情報を得て選択できるよう、新しく『機能性表示食品制度』が始まりました」とホームページに公開しています。つまり、トクホのような許可を受ける手続きの負担を少なくし、企業から出された商品の情報を閲覧できるようにしたので、利用価値の有無は消費者が自ら判断する必要があるということです。こちらもトクホ商品と同様に、多大な効果があると期待しすぎることは禁物です。
保健機能食品に頼りすぎず、利用をきっかけに生活習慣を見直してみましょう。