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うみねこ通信 No.255 令和2年9月号

がん診療センター開設

副院長、がん診療センター長 真里谷 靖

皆さんの中には、8月6日付デーリー東北、8月7日付東奥日報に掲載された記事で既にお知りになっている方々も多く居られると思いますが、本年11月初旬より当院にがん診療センターが開設されます。

本センターについては、当院における現在の診療の柱とされるがん診療、生活習慣病対策、整形外科診療、泌尿器科診療のうち、少子高齢化の現代において今後さらに大きな課題となるがんの診療および患者・家族支援について、目に見えるような思い切った改革が必要であるという我々の強い想いがその根底にあります。

少子高齢化という最早避けることのできない社会の動きは、がん患者さんの絶対数増加を意味する一方で、これまで家族・親類や居住地周辺の人的な繋がりが基盤にあった強固なサポートが期待しにくくなっていることをも意味します。ところが同時に、国の医療への方向付けとして、がんも含めた患者さんの在宅医療へのシフトという大きな流れが存在し、旧来の人的支援の輪が次第に弱くなっていくなかで、がん患者さん、特に高齢の方々が治療を受け、日常生活に戻っていくことは徐々に容易ではなくなっているのが現実です。

しかし、がん治療が驚くべき速さで進歩していることも事実です。例えば、当院のトピックとして最近紹介された高精度放射線治療(ピンポイント照射と呼ばれる体幹部定位放射線治療や強度変調放射線治療など)は、がん病巣への高い線量集中性と周辺臓器への影響の低減により、低侵襲的に(体に優しく)治療効果を大きく改善することを可能にしました。いわゆるゲノム医療や免疫療法の進歩は、我々が医者になったころには想像もできなかった発想と手法で(まだ一部の患者さんに留まってはいますが)著しい抗がん効果をもたらしてくれるようになりました。また、投薬だけでなく看護、社会福祉など様々な方向からの包括的取組みによる緩和ケアの進歩は、疼痛のみならず精神的、経済的、社会的ストレスなどに苦しめられることが多かったがん患者さんに、これら苦痛の軽減や社会生活への復帰といった大きな福音をもたらしてくれるようになりました。

ただ皆さんの多くは、まだそのような治療やケアがごく身近なものになった実感が乏しいと思います。また、それがどのような内容なのか、どうやってそこに到達出来るのか、等々多くの疑問をお持ちのことと思われます。

そこで我々は、がん患者さんやご家族をはじめ地域の皆さんを対象に、現代のがん診療をよく理解していただき、かつ近づきやすいものにするため、先ずオープンで分かりやすい総合窓口を設置することにしました。この総合窓口の存在によってがん関連の相談受付けは一本化され、がん診療に関する直接のご質問、電話、FAXや電子メールでのお問い合わせ等に広く門戸が開かれます。加えて既存のがん相談支援センターや地域連携室などと一体化して動くことで、現実のがん診断・治療にどう対応したらよいのか、退院後の生活をどう送っていけるのか、といった迷いや不安をお持ちの患者さんやご家族への支援体制の強化、支持がこれまで以上に充実したものになると考えています。

さらに院内では、部局・組織横断的で効率の良いがん診療を行うことを目指していきます。例えば、がん患者さんの診断、治療方針についてひとつの診療科や部門に捉われず関連するスタッフ全員が意見を出し合い最適なものにしていく“キャンサーボード” と呼ばれるミーティングがありますが、このような診療科や部局の垣根を超えた連携をこれまで以上に強化していくことが重要です。また、診療科のみならず、看護部、薬剤部、中央検査部、中央放射線部、中央リハビリテーション部、栄養管理室、院内がん登録室などそれぞれの専門領域を持つ診療支援部門からも、がんというテーマで一貫した協力を得ることにより病院の総力を結集し、がん患者さんの診断、治療からご自宅や社会への復帰という一連の過程が滞りなく流れていくよう努力していきます。

即ち、我々が考える“がん診療センター” とは、当院が有するがんに関連した医療資源や診療体制を再配分、再構築し、地域のがん患者さんやご家族が出来るだけ効率的にこれを活用できるため“目に見える” ようにする場、同時に我々医療者自身が連携を見直し現代のがん診療を最適な形で提供できるようにする場であると言えます。

開設までまだ2ケ月ほど時間がありますが、センター開設が持つ意味と、既に準備が開始され、着々と進んでいることを皆さんにお伝えしようと思い、筆をとりました。よろしくお願いいたします。

 

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