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うみねこ通信 No.263 令和3年5月号
ご存知ですか?今、注目のビタミンD
中央検査部長 河村 義雄
- 最近、時々テレビ番組に「ビタミンD」が出てくることがあります。しかし、ビタミンAとかBとかCはよく耳にしますが、ビタミンDはあまり聞くことはありません。では、ビタミンDとはどういうものなのでしょうか?今回は筆者が以前赴任していた秋田労災病院(秋田県大館市)において労災病院臨床研究事業「中高年層勤労者の腰痛症と転倒予防のためのデータベース作成」(HACHICOTrial:ハチコートライアル)の研究のお手伝いする機会があり、そこでビタミンDについていろいろ調査、研究をしていましたので、ほんの少しですがご紹介させていただきます。
*大館市は秋田犬の里といわれ「忠犬ハチ公のふるさと」といわれています。
- ビタミンDの効果
- ビタミンDはカルシウムのバランスを整えるのを手伝ったり、骨の健康を保つために働いています。また最近では、免疫力アップ効果やガンや糖尿病、自閉症、妊娠しやすい体作りなどに有効かもしれないという報告もされるようになってきています。
- 日本人のビタミンDの血液濃度
- 数年前まで日本ではビタミンDについてあまり関心がなかったこともあり、日本人のビタミンD濃度を調べられる機会があまりありませんでした。HACHICOTrialでは秋田県大館市内1企業に勤務するHACHICO trialの趣旨に同意した1400人から、無作為に抽出した258名(年齢19歳~65歳、男性195名、女性63名)のビタミンD濃度を測定してみました。
- 日本人はほとんどビタミンD欠乏症
- (%) 秋田県大館地区のビタミンD分布
- 上記の調査の結果、驚くことがわかりました。全体の28%の人が重度の欠乏症、78%の人が欠乏症、充足している人はたったの3%でした。この結果は予想もできなかった、驚くべき事実でした。高齢になり、このような状態が長く続くと骨粗しょう症から骨折するリスクも高くなっていきます。
- ビタミンDを体に取り入れる方法
- 人がビタミンDを得るには2つの方法があります。食べ物から摂る方法と、日光を浴びて紫外線にビタミンDをつくってもらう方法です。食べ物由来のビタミンDは、ビタミンD2が植物由来、ビタミンD3が動物由来です。紫外線にビタミンDを作ってもらうためには15~20分日光を浴びることが大切です。しかし紫外線は美容の敵なので「手の平」を日光にあてることでもビタミンDをつくることができます。食べ物から摂取するためにはビタミンDを多く含む食品を摂取する必要があります。ビタミンDを多く含む食品は魚類が多く、特に容易に摂取できるのが「鮭(さけ)」です。大き目の鮭の切り身一切れで約1日分のビタミンDが摂取できます。以前より新潟県の村上市の住人のビタミンD値が他の地域と比較して高いことがわかっていました。その原因は日常的に鮭を食べる習慣があるためとのことです。しかし普通ここまで食べることは難しいことです。アメリカではビタミンDの摂取にサプリメントを利用しています。この2~3年アメリカ人がビタミンDを摂取するようになった背景には、紫外線からの皮膚がんの心配があるためと言われています。
- 自分の身を守るためには・・・
- 今までビタミンDは高齢者の骨粗しょう症との関連で注目されてきましたが、近年、筋肉の衰えを防ぐという面でも重要な役割を果たしていることがわかり、サルコペニアやフレイルの予防において注目されています。筋肉にはビタミンDの受容体があり、ビタミンDと結合するとタンパク質の合成が促進されます。フレイルの予防・改善には筋力や筋肉量の維持・増加がカギとなりますが、ビタミンDは筋肉の増強に一役買っているのです。ビタミンDにより筋力アップ、骨量アップで自分の身を守ることにもなります。
- この紙面を見ていただいている皆様にビタミンDについてお伝えしたいことはまだまだ、たくさんあります。今後、労災病院地域連携セミナーが開催された折には講演の形で皆様にお伝えできればと思っています。