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うみねこ通信 No.290 令和5年8月号
加熱式タバコについて知ろう!
歯科口腔外科医師 山崎 峻也
- 「紙タバコは体に悪いから加熱式タバコに変えたんだよ」、「加熱式タバコは煙が出ないし、紙タバコより健康被害は少ないんだよ」と話している方をたまに見かけます。本当にそうなのでしょうか?国内では、加熱式タバコ(Heated tobaccoproduct: HTP)は2014年以降台頭してきており、IQOS(アイコス)を筆頭に、glo(グロー)、Ploom TECH(プルームテック)、PULZE(パルズ)、lil HYBRID(リルハイブリッド)など様々なメーカーが市場に浸透しています。令和元年の国民健康栄養調査では、男性の喫煙率が27.1%、女性は7.6%であり、この中で加熱式タバコを喫煙している割合は20%以上です。その割合は年々増加傾向であり、特に若い年齢層で高い傾向にあります。
- 加熱式タバコはよく電子タバコと混同されることが多いですが、両者は全く異なるものです。加熱式タバコがタバコ葉やその加工品を電気で加熱することによって水蒸気(エアロゾル)を発生させるのに対して、電子タバコはタバコ葉ではなく、ニコチンなどの入った溶液(リキッド)を加熱してミスト化させ、蒸気を発生させる。薬事法で日本製の電子タバコにはニコチンを含むことが禁止されていますが、市場に出回っている電子タバコからニコチンが検出されたという報告もあります。加熱式タバコも電子タバコも共に健康障害を起こす可能性が高く、よくある勘違いについていくつか説明させていただきます。
- 1.加熱式タバコにもニコチンは含まれている!
- 紙タバコがやめにくい理由としてニコチン依存症がありますが、加熱式タバコにもニコチンは含まれている。したがって、禁煙の第一歩として加熱式タバコに切り替える人がいるかもしれませんが、依存性は変わらず存在し、禁煙の補助とはなり得ません。
- 2.健康障害は紙タバコと比較して低いわけではない!
- 加熱式タバコの中身は、紙タバコと同じタバコの葉であることから、ニコチンやタールなどの有害物質やニトロソアミンなどの発癌物質なども含まれていることが明らかになっています。また、有害性成分が紙タバコと比較して少ないからといって、体に対する有害性が低いわけではありません。各メーカーの広告を見てみると、「有害性成分の約90%の低減」などの謳い文句がありますが、但し書きを見てみると、どのメーカーも「他のタバコ製品と比較して健康上のリスクが低いわけではない」と書いてあることに注意が必要です。
- 3.加熱式タバコにも副流煙はある!
- 加熱式タバコの煙は肉眼では見えづらく、受動喫煙は生じないよう受け止められがちですが、認識し難いだけであり、紙タバコと同様に受動喫煙は生じています。
- 以上のように、加熱式タバコは紙タバコと同様に健康障害のリスクがあります。タバコは嗜好品であり、その喫煙に関しては個人の自由でありますが、加熱式タバコに対して正しい知識を持つことは重要であります。また、目に見えづらいだけで副流煙が発生していることから、紙タバコと同様に、望まぬ受動喫煙をさせないような配慮が必要となります。