HOME ≫ 各種ご案内 ≫ 広報誌のご案内 ≫ うみねこ通信 ≫ 令和5年9月号
うみねこ通信 No.291 令和5年9月号
先生、おちんちんの皮がむけません!
泌尿器科医師 三浦 佑規
- ・包茎とは?
- 外来診療ではしばしば「おちんちんの皮がむけなくて洗えません。治してほしい。」と母親が相談に来ることがあります。“包茎” とは包皮口が狭いために亀頭を露出できない状態を指し、殆どの乳幼児が該当します。一般的な包茎とは普段亀頭が露出していませんが、剥けば亀頭が露出できる仮性包茎=包茎のイメージだと思います。95%の男児で思春期以降までに亀頭露出が可能となると言われています。泌尿器科医が普段治療対象としているのは思春期以降も全く亀頭が露出できない1~5%の“真性包茎” や症状のある包茎です。これについては後述します。
- 男児の出生時に包皮口が開いていることは滅多になく、包皮と亀頭も生理的に癒着しています。成長とともに包皮口は開き、分泌物(恥垢)の存在により癒着が剥がれていくとされています。包皮は乳幼児期の繊細な外尿道口を保護する役割があり、強制的に皮を剥いたり、外科的治療をしたりすることには慎重になる必要があります。世界的に見れば宗教的儀式のため割礼を行う地域があったり、感染症予防のために環状切除術を行う地域があったりすることは確かです。
- 一般的には無症状の小児包茎に対しては治療介入の必要はなく、お子さんには汚い手で触らないように指導してください。では治療が必要な包茎とはどのような包茎でしょうか。
- ・治療の必要な包茎
- 1.亀頭包皮炎
- 亀頭と包皮の間に細菌が侵入し、陰茎の発赤、疼痛、排膿等が発生します。抗菌薬の内服と軟膏処置で改善しますが、繰り返す場合は包茎が原因となっている可能性が高いため治療が必要となります。
- 2.バルーニング
- 包皮口が針のように細く、排尿時に包皮内に尿が貯留して風船のように膨らむ事があります。排尿が終われば縮小し、残尿がなければ問題はありませんが、亀頭包皮炎の原因にもなるため治療介入する場合があります。
- 3.尿線方向の異常
- 親御さんの中で「お子さんのトイレトレーニングを進めても便器の外におしっこが出てしまう」といった経験はありませんか。包皮の長さの左右差が原因となっている可能性が高く、成長とともに外尿道口が露出できればまっすぐ排尿できるようになります。それまでは手を添えて方向を定める指導をお願いします。もちろん、ピンホールが原因となっている場合や尿道下裂が原因となっていることもあるので、お子さんのちんちんを観察してください。
- 4.嵌頓包茎(かんとんほうけい)
- 包皮口が狭い状態で強制的に皮を剥いてしまうと亀頭の首が絞まりうっ血してしまいます。元に戻すことができず、強い痛みと浮腫を起こします。雑誌等でおちんちんは剥いて洗わないといけないという情報により誘発されます。発症してすぐであれば、用手的に整復することができますが、浮腫が強い場合は緊急手術が必要となることがあります。
- ・治療の実際
- 1.軟膏処置
- 上記症状が軽く、早期の手術が必要ないと判断された場合はステロイド軟膏を塗布することにより包皮口の伸展を促します。半年程度軟膏処置を行い、包皮伸展を認めない場合は外科的治療に進むことが多いです。
- 2.外科的治療
- 狭窄の原因になっている包皮の切除を行います。背面切開術や環状切除術、包皮形成術などがあります。小児の場合、全身麻酔で手術を行うことが多く入院期間は3日程度になります。
- ・まとめ
- 小児期の包茎には治療の必要ない包茎が多くみられます。しかし思春期以降になっても真性包茎である場合、親御さんが観察する機会はなくなり、本人がその異常に気がつかないケースもあります。射精障害や不妊症の原因になるため、泌尿器科を受診しましょう。