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うみねこ通信 No.306 令和6年12月号
- 女性化乳房症は、男性において乳腺組織が異常に発達し、女性のように乳房が膨らむ状態を指します。この症状は一時的なものから慢性的なものまで幅広く、思春期や高齢者に多く見られます。
1 女性化乳房症の原因
- 女性化乳房症は、男性の体内でのホルモンバランスの乱れによって引き起こされることが一般的です。男性と女性の両方が、エストロゲン(女性ホルモン)とテストステロン(男性ホルモン)の両方を体内に持っていますが、男性の場合、通常はテストステロンが優位に働き、エストロゲンの影響は最小限です。しかし、何らかの理由でエストロゲンが相対的に多くなると、乳腺組織が刺激され、女性化乳房症が発症します。
1.1 ホルモンのバランスの変化
- 思春期:思春期の男児は、急激なホルモンの変動により、一時的な女性化乳房が発生することがあり。多くは自然に解消されます。
- 加 齢:高齢になると、テストステロンの分泌が減少し、エストロゲンの影響が強くなるため、女性化乳房症が発生しやすくなります。
1.2 薬 剤
- いくつかの薬剤は、女性化乳房症を引き起こす可能性があります。
- ステロイド:アナボリックステロイドやコルチコステロイドの使用は、体内のホルモンバランスを乱します。
- アンドロゲン:前立腺肥大症や前立腺癌の治療薬が、テストステロンの作用を抑制し、エストロゲンの影響を強めることがあります。
- 抗うつ薬や抗不安薬:一部の精神科薬も、ホルモンバランスに影響を与えることがあります。
1.3 疾 患
- 肝疾患:肝機能が低下すると、ホルモン代謝が障害され、エストロゲンのレベルが上昇することがあります。
- 腎不全:腎臓の機能低下によりホルモンバランスが崩れることがあり、透析患者さんに女性化乳房症が見られることがあります。
1.4 その他の原因
- アルコールや違法薬物も、ホルモンバランスに影響することがあります。
2 症 状
- 女性化乳房症は、以下のような特徴を持っています。
- 乳房の腫れ:乳腺組織の増殖により、乳房が膨らむ。片側だけに発生することもあれば、両側に現れることもある。
- 痛みや圧痛:腫れた乳房に痛みや圧痛が伴う場合もあり、特に衣服が擦れると不快感が強まることがあります。
3 診 断
- 病歴、身体診察、検査により行われます。
3.1 病歴の確認
- 医師は、患者の病歴を詳細に確認します。特に、薬物使用、基礎疾患、家族歴、ライフスタイルが重要な情報となります。
3.2 身体所見
- 医師は、乳房の膨張を視覚的に確認し、触診によって乳腺組織の増殖や硬さを確認します。また、乳がんなどの他の疾患の可能性を排除するために、しこりの有無もチェックします。しこりが見つかった場合は、悪性腫瘍の可能性があるため、さらなる検査が必要です。
3.3 血液検査
- テストステロン、エストロゲン測定、肝腎機能評価を行います。
3.4 画像診断
- 超音波検査やマンモグラムが行われることがあります。
4 治療法
- 女性化乳房症の治療は、原因に応じて異なります。多くの場合、時間とともに自然に解消することもありますが、症状が持続したり、心理的な影響が大きい場合には治療が必要となります。
4.1 経過観察
- 思春期や一時的なホルモンバランスの変化によって女性化乳房症が発症した場合、通常は特別な治療を必要とせず、経過を観察します。多くのケースでは、数か月から1年以内に症状が自然に改善します。
4.2 薬物治療
- ホルモンバランスが原因で女性化乳房症が発生している場合、ホルモン療法が行われることがあります。
- 抗エストロゲン薬:エストロゲンの作用を抑える薬剤が使用されることがあります。タモキシフェンなどがその一例です。
- アンドロゲン補充療法:テストステロンの不足が原因である場合、テストステロン補充療法が行われることがあります。
4.3 外科的治療
- 薬物治療や経過観察で改善しない場合、外科的治療が検討されます。見た目の問題が大きく、日常生活に支障をきたす場合に推奨されます。
5 生活への影響
- 女性化乳房症は、身体的な変化だけでなく、心理的な影響も大きいです。家族や医療チームとの連携が、患者の生活の質を向上させるために重要です。