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うみねこ通信 No.296 令和6年2月号

下肢静脈瘤の新たな治療法

心臓血管外科部長 野村 亜南

【下肢静脈瘤とは】
下肢静脈瘤とは足の内側にある大伏在静脈や、ふくらはぎの辺りにある小伏在静脈を流れる血液が逆流を起こし、その結果血管が拡張して静脈瘤となります。本来静脈の中には血液が逆流しないように弁が付いていますが、弁の機能が悪くなったために逆流を起こしてきます。症状は痛み、むくみ、痒み、足を攣つ る等、人によって様々です。重症化してくると色素沈着や潰瘍を形成することもあります。症状がそれほどひどくなければ逆流があっても必ずしも手術は必要ありませんが、症状が辛いとか、見た目が気になるといった場合には手術を考えることになります。

【手術】
① 硬化療法
主に皮下の細い静脈瘤に対して行う治療法で、ポリドカスクレロールという薬剤を空気と混ぜて泡状にし、血管内に注射することで静脈をつぶしてしまいます。外来でできる治療で入院が必要ありません。
② ストリッピング
血管を抜去するという手術で、10年程前まではストリッピングが一般的な治療法でした。腰椎麻酔で手術を行うため、入院が必要であり、麻酔に伴う合併症も0ではありません。
③ 血管内焼灼術(レーザー、高周波(RFA))
静脈瘤の治療を行っているほぼ全ての病院で行われている手術で、現在はこの治療が一般的です。レーザーや高周波で逆流を起こしている血管を焼いて潰してしまうという手術です。ストリッピングと違い局所麻酔で治療が可能で、病院によっては日帰りで行っているところもあります。(当院では2泊3日です)術直後から歩行可能であり、患者さんの負担も軽いと思われます。レーザーも高周波も焼き方が違うだけで、どちらも術後の成績は変わりません。当院ではレーザーと高周波と両方の器械を置いています。
④ 静脈瘤塞栓術
この治療法が現在増えてきている新たな治療法で、日本では4年前に導入された治療法になります。図の様な拳銃のような形をしたデバイスを用いて、薬剤(医療用の糊)を血管の中に注入することで薬剤と血液が反応して固まり、血液の流れが止まります。レーザーや高周波による治療は焼いている時に火傷をしたり痛みを感じたりするため、治療する血管の周りに全長に渡って低濃度大量浸潤麻酔(TLA)という薄めた麻酔薬を注射しなければなりません。しかし、塞栓術の場合はTLA麻酔が不要であるため、最初に針を刺す部位に局所麻酔をするだけで治療することが出来、手術時間の短縮にもなります。術後の成績も焼灼術と変わらないため、当院でも積極的にこの治療法を行っております。ただ、薬剤に対してアレルギーを起こすこともあるため、アレルギーが多い方にはあまりお勧めしません。

当院では患者さんの状態に合わせて、適切な治療法を選択して行っております。静脈瘤による症状が辛いような時は一度専門医の受診をお勧めします。
 

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