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うみねこ通信 No.299 令和6年5月号
運動と睡眠の関係
中央リハビリテーション部長 佐藤 眞規
- 最近のテレビなど、いろいろなメディアで睡眠という言葉をよく耳にします。良い睡眠のための枕、睡眠のためのドリンクなどのコマーシャルをみかけることもあります。これは睡眠に対する関心が「どの程度の時間、睡眠がとれたか」というものから、「良い睡眠がとれたか」という睡眠の質を考えるものへと変化しているのではないかと思われます。運動もまた睡眠と深い関係があります。睡眠により運動パフォーマンスが向上したり、不眠の改善のために運動が有効であったり、今回は運動と睡眠の関係についてお話します。
〇睡眠の基礎知識
- 2021年の経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、各国平均の8時間28分より1時間以上短く、33カ国の中で最低でした。
- 厚生労働省が今年の2月に公表した健康づくりのための新たな睡眠ガイドに示されている基準が成人の睡眠時間は6時間以上が目安というものです。成人以外では「1~2歳は11~14時間」「3~5歳は10~13時間」「小学生は9~12時間」「中高生は8~10時間」「高齢者は床上の時間が8時間以上にならないこと」となっています。成人を「6時間以上」としたのは、睡眠時間が極端に短いと肥満や糖尿病、うつ病などの発症リスクが高まると言われています。また、子どもは心身の発達に欠かせない成長ホルモンが深い睡眠中に分泌されるため、長い睡眠が推奨されています。逆に、高齢者は「寝過ぎ」が問題になります。9時間以上の睡眠でアルツハイマー病の発症リスクが増加するという最新の研究成果などがあります。介護が必要な高齢者では介護量が多い人ほど、「寝てはいないが横になっている時間」も増えるため長く床についていると生活習慣病やうつ病、認知症になりやすいと考えられます。
〇運動パフォーマンスを向上させる睡眠
- ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手は毎日10時間ほど睡眠をとっていると言われています。深い睡眠をとることで、成長ホルモンが分泌してケガが治る、疲れがとれる効果があります。眠ることは脳を休ませますが、睡眠をおろそかにするとどれだけトレーニングをしても思うように身体が動かないことがあります。大谷選手の素晴らしいパフォーマンスは良い睡眠のおかげかもしれません。また、昼寝にもその後の覚醒が向上する効果があると言われています。短い時間で毎日同じタイミングの仮眠(15時前、20~30分程度)はスッキリとしその後の覚醒もよくなり、夜間も深い睡眠になると言われています。ただし、長時間の昼寝やバラバラな時間の仮眠は睡眠のリズムが狂い夜の睡眠が浅くなってしまいます。
- では、どんな運動が良い睡眠のためにいいのでしょうか?
- 散歩などの有酸素運動を毎日行うと不眠が解消し睡眠の質を高めるという報告は多くみられます。たとえば、ウォーキングや、サイクリングなど息が少しはずむ程度の運動が良い睡眠のための有酸素運動となります。
- 最近では高齢者に対するスクワットやかかと上げなどややきついレジスタンス運動が有効であるとする報告も見られるようになっています。レジスタンス運動の例としてはスクワット、かかと上げなど10回1セットから徐々に回数を増やしていく運動などが行いやすいと思います。
- 皆さんも体を動かしてぐっすり眠りスッキリした朝を迎えましょう。